宇宙産業で用いられるさまざまな機器の制御ソフトウェアを20年以上提供してきたウインドリバー。同社 グローバル航空宇宙・防衛担当バイスプレジデントのレイ・ペティ氏に、宇宙産業の市場動向や同社の取り組みについて聞いた。
米国のスペースX(Space X)に代表されるように、民間からの宇宙産業への参入が活発になっている。国内でも、これまで宇宙開発をけん引してきたJAXA(宇宙航空研究開発機構)のプロジェクトにとどまらず、さまざまな企業が市場参入に向けてロケットや衛星、月探査機などの開発を進めている。
これらの宇宙産業で用いられるさまざまな機器の制御ソフトウェアを20年以上提供してきたのがウインドリバー(Wind River Systems)だ。同社のリアルタイムOS「VxWorks」は、NASA(米国国空宇宙局)の火星探査プロジェクトをはじめさまざまな宇宙機器に採用されており、近年では宇宙産業への参入を目指す民間企業からの引き合いも強いという。「火星でのリアルタイムOSのシェアは100%」と豪語するウインドリバー グローバル航空宇宙・防衛担当バイスプレジデントのレイ・ペティ(Raymond F. Petty)氏に、市場動向や同社の取り組みについて聞いた。
現在の宇宙産業は、大まかに2つに分けることができる。1つは、これまでも宇宙開発を支えてきた各国政府が主導するプロジェクトである。これらは、政府単独とは限らずさまざまな産業界と連携するようになっている。また、国際宇宙ステーション(ISS)などの国際共同ミッションも進められている。最近では、米国が宇宙軍の再編に乗り出しており、これと関連して防衛予算も増加している。ペティ氏は「政府系の宇宙開発プロジェクトという意味では、米国、中国、ロシア、フランスそして日本の上位5カ国に資金が集中している」と語る。
もう1つは、成長が著しい民間企業による宇宙開発の市場だ。地球軌道などに打ち上げ済みの宇宙資産の管理やスペースデブリへの対応、小型衛星の活用といった形で多くの企業が参入しているのだ。「特に、衛星を小型化する先進技術が、新規に宇宙ビジネスを拡大する原動力になっている。スペースXに代表されるロケット打ち上げサービスが拡大しているのも、衛星の小型化によるところが大きい」(ペティ氏)という。
例えば、ある大型衛星の場合、サイズは26×12×11フィート(約7.9×3.6×3.3m)、重量は1万4000ポンド(約6300kg)に達する。重い、つまり打ち上げコストの高い大型衛星は長期間の利用が前提となっており、そのための信頼性の確保や耐放射線対策、ソフトウェア更新、復旧を可能とするシステム構成なども必要になるので、さまざまな意味で高コストにならざるを得ない。さらに、地球軌道ではなく、ディープスペースと呼ばれる深淵軌道や、地球以外の惑星軌道に投入する衛星は、より高度な要件を満たさなければならない。
これに対して、マイクロ衛星と呼ばれるタイプの小型衛星は、サイズが3フィート(約0.9m)角、重量は650ポンド(約294kg)にすぎない。軽い、すなわち打ち上げコストが安価である上に、用途にもよるが大型衛星と比べて短い製品寿命を前提とした設計も可能なのでさらなるコスト削減の余地がある。
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