ウインドリバーは2019年3月14日、東京都内で記者説明会を開き、「Helix Virtualization Platform」を日本市場向けに正式にリリースしたと発表した。
ウインドリバーは2019年3月14日、東京都内で記者説明会を開き、「Helix Virtualization Platform」を日本市場向けに正式にリリースしたと発表した。
同製品はリアルタイムOS(RTOS)と組み込みLinuxディストリビューションをエッジコンピューティング用仮想化ソフトウェアプラットフォーム向けに統合したもの。同じフレームワークの中で、他のOSを未修正でも実行することができる。ソフトウェア開発環境も併せて用意する。
航空宇宙や産業用インフラ、自動運転車などエッジコンピューティングが求められる分野は、ハードウェアの刷新とセキュリティへの対応、開発コスト削減が共通の課題となっている。そのため業界を超えて1つのプラットフォームを提供していく。
米国本社のWind Riverで最高戦略責任者を務めるギャレス・ノイズ氏は、「カスタマーのビジネスモデルは、ハードウェア主体でシンプルで、信頼性を確保しやすかった。しかし、従来のビジネスモデルには課題があり、ハードウェアの開発期間の長さやアップグレードのしにくさ、セキュリティ対応、時間がたつにつれて保守が煩雑になることなどが挙げられる」と事業環境を説明。
さらに、自律型のシステムが求められていることが取引先にとって大きな課題となっていると述べた。高度な安全が要求されるだけでなく、ソフトウェアで動作するアプリケーションの安全性の確保や、インフラとの協調も必要になる。こうした取り組みにより、高い付加価値を持たせることのニーズが高まっているという。ウインドリバーの取引先となる業界は、機能安全への準拠やサイバー攻撃に対する準備、信頼性の確保、当局の規制や安全認証への対応が必須となる。
Helix Virtualization Platformの提供により、これまではITの領域でしか使えなかったクラウドのアプリケーションをOTの領域でも使えるようにする。これにより、クラウド活用を支援し、新しいアプリケーションを容易に導入できるようにする。
「半導体とアプリケーションは更新のスピードが異なる。両者を切り分けて、依存しない形でアプリケーションを運用できるようにする。堅牢な制御システムに、機械学習や高度なグラフィックスを組み合わせることが可能になる」(ノイズ氏)。その一例として、“コネクテッドMRI”があるという。MRI(磁気共鳴画像診断装置)としての機能に画像を分析するためのユーザーインタフェースと、クラウド側でのAIによる診断支援を組み合わせることで高度な診断を実現する。
異なるOSを同じハードウェアプラットフォームで実行するには、アプリケーションを抽象化し、ハードウェアが動作するときの依存関係をなくすことが必要だ。そのため、システムのパーティショニングを行い、安全要求レベルの異なるソフトウェアを共存させる。パーティショニングにより、ロバスト性が求められるドメインと、Linuxや機械学習のフレームワークなど、動的に変更するドメインを分ける。柔軟性も確保し、さまざまなOSに対応する。
記者説明会には、2019年1月にWind River日本法人のウインドリバーで代表取締役社長に就任したマイケル・クラッツ氏も出席した。同氏は25年間Motorolaに勤務し、通信分野に長く携わった。Wind Riverでは、最高製品責任者として各事業の戦略やプロダクトマネジメントを担当。現在はアジア太平洋地域の自動車向けビジネスも統括する。
クラッツ氏は自動車について、ソフトウェアで動作するアプリケーションの安全性の確保が遅れていると指摘し、Wind Riverが持つ航空宇宙向けの実績やノウハウが自動車業界に役立つと語った。
「Wind RiverはRTOSで36%、組み込みLinuxで52%、NASA(米国航空宇宙局)の火星探査では100%のシェアを持つ。RTOS、組み込み仮想化プラットフォーム、クラウド、開発ツールのそれぞれで競合企業が存在するが、全て包括的に提供できるのが強みだと自負している。受託開発やトレーニングも提供する」(クラッツ氏)
日本国内の体制は、営業本部と営業技術本部の下、オートモーティブやインダストリアル、メディカル、ネットワーク、航空宇宙防衛、コンシューマー向けなど各分野について日本語で、時差なく応対していく。取引先の開発環境を安全に預かるためのバーチャルラボも持つ。
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