本連載では前後編にわたり、IoTデバイスの基本構成や認証について述べてきました。最後に、そのデバイスをどんな視点で選ぶべきかをご紹介したいと思います。デバイスを選択する観点は無数にあるのですが、今回はデバイスの構成要素をどこまでカバーしているかに注目してみます。
市販のデバイスの中には、通信に必要なハードウェアから技適、さらにはホストCPU上のアプリケーションまで用意されていて、買ってきたらすぐに使えるデバイスがあります。例えば、筆者が所属するソラコムが提供している「GPSマルチユニット SORACOM Edition」です(図8)。
GPS、温湿度、加速度といった各種センサー、通信モジュールとSIMカードを内蔵し、手元に届いたらすぐにセンサーデータをクラウドにアップロードできる仕組みとなっています。こういったデバイスは、利用用途にあった機能を持っていれば開発にほとんど時間をかけることなくIoTプロジェクトを始めることができるため非常におすすめです。
アプリケーションをつかさどるホストデバイスやアプリケーションはオリジナルで作りたいが、通信機能はできるだけ簡単に付加したい。そんなケースにはUSBドングルタイプの通信デバイスがおすすめです(図9)。
慣れ親しんだLinuxやWindowsが動くホストCPUを持つデバイス(例えば「Raspberry Pi」)にUSBインタフェースで接続して簡単な通信設定をするだけですぐにIoTデバイスとして使用することが可能です。
USBドングル型のデバイスは技適が取得された状態で販売されているものが多く、本番運用も可能なので安心して使えるのが大きなメリットです。
さまざまな要求に答えるために自由度高くデバイスを設計したい場合にはチップ型無線モジュールを使っての開発が向いています。
通信モジュールのみを提供しているため、アンテナや周辺のハードウェア、アプリケーションなどの準備、技適の認証取得を行う必要がありますが、最も自由度が高くデバイスを設計できます。また、場合によっては既に技適を取得済みのアンテナとの組み合わせを持つモジュールも存在します。そういったデバイスを選定した場合、技適の申請をすることなく使うことができます(図10)。
後編に当たる本稿では、IoTデバイスを日本で使う上で取得しなければならに「技適」について、その概要と注意点を説明してきました。また、最後にはデバイスの構成要素から見るデバイス選定として幾つかのデバイスをご紹介しました。
IoTはデバイス、通信、クラウドの連携が必要な技術分野であり、全てを自前でカバーするのはなかなか大変です。しかし、現在はデバイス、通信、クラウドの全ての分野で簡単に使い始めることができるサービスや製品が数多く存在しています。それらをうまく組み合わせることでIoTプロジェクトは一気に成功への道が開けてきます。
本連載を通して、IoTデバイスの基本的な知識を知っていただき、IoTプロジェクトを進める際の助けになればとてもうれしく思います。本連載を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。(連載完)
横田 峻(よこた しゅん)ソリューションアーキテクト
株式会社ソラコムでソリューションアーキテクトとして、ソラコムサービス活用やIoTシステム構築、デバイス開発の技術支援を行う。
前職は、株式会社リコーにて主に新規事業担当エンジニアとして電子回路設計、各種認証試験、3Dプリンタの活用などのハードウェア開発、プロトタイピングに従事、その後ソフトウェアエンジニアに転向。B2B向けソリューション開発部署にてWebサービスのバックエンド開発を行う。
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