2つ目は、回生ブレーキと摩擦ブレーキとの協調で生まれる違和感です。回生ブレーキと摩擦ブレーキは、指示を出してから実際にブレーキがかかるまでの応答性が異なり、さらにその応答性はばらつきます。
違和感を覚えやすい具体的な例としては、ブレーキを踏みこんでいって回生ブレーキが上限に達し、摩擦ブレーキを介入させるシーンがあります。摩擦ブレーキの介入までに応答遅れが発生するため、一瞬ブレーキが停滞するような感覚になります。また、停車間際で回生ブレーキを摩擦ブレーキにすり替えていく際にも、違和感を覚えやすいです。回生ブレーキを減少させてその分を摩擦ブレーキで補いますが、摩擦ブレーキに比べて回生ブレーキは応答性がよいため、摩擦ブレーキが応答するまではブレーキが抜けているように感じます。
回生ブレーキだけでドライバーが要求する減速を全てカバーできればいいのですが、モーターが時間当たりに回収できるエネルギーや、ためられるエネルギーの量には制限があります。全ての制動を回生ブレーキだけでまかなうのは難しく、摩擦ブレーキとの協調制御が必要です。
回生協調ブレーキを扱うメーカーは、このような違和感に対して、摩擦ブレーキの応答遅れを見込んで、早めにブレーキの指示を出すなどさまざまな工夫を施しています。このような努力があって、回生協調ブレーキの違和感は徐々に気にならないレベルになってきています。
回生協調ブレーキは伝統的なブレーキと比べて車両のコストアップにつながりますが、燃費改善によってランニングコストの削減に貢献できると捉えることもできます。業務で使うために安価な装備が求められたバンやワゴン、タクシーなどのクルマでも、回生協調ブレーキの採用が進むのではないでしょうか。
市街地を主に走る業務用の車両であれば、信号などで頻繁にブレーキを踏む場面があるので燃費改善効果のメリットが得られやすいからです。「ガソリンエンジン車の販売禁止」が計画通りに実現すれば車両価格が増加することは避けられませんが、仕事でクルマが必須となる人々に向けてランニングコストを下げることで役に立っていくことが必要です。
世界中で環境対策として自動車の排出ガス規制が厳しくなり、燃費のいいクルマが求められています。これに応えるため、自動車メーカー各社はハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などさまざまな動力源の自動車を開発していますが、いずれの環境車の性能向上にも運動エネルギーを電気エネルギーに変換するブレーキの技術が貢献できます。ドライバーに違和感を与えるという課題はありましたが、燃費(あるいは電費)の改善と、自然なブレーキフィーリングの両立が実現していくことでしょう。
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