3Dプリンタや3Dスキャナー、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。第9回は、その特徴や方式の違いなどに触れながら、3Dスキャナーの選定基準について詳しく解説する。
3Dスキャナーの導入を検討する際、どのような基準で機器を選定したらよいのでしょうか。
世の中には、さまざまな3Dスキャナーのメーカーが存在し、機種、方式、性能、価格などの違いがあります。そのようなたくさんの候補の中から、どの3Dスキャナーを購入すればよいのかと、多くの方がインターネット検索などを利用して情報収集されているかと思います。ただ、そうはいっても初めてのことだと何かと判断に迷うこともあるでしょう。
そこで今回は、3Dスキャナーの特徴や方式による違いなどに触れながら、「3Dスキャナーの選定基準」について解説したいと思います。最後までどうぞお付き合いください。
なお、3Dスキャナーの用途や苦手なこと、必要な作業について知りたい場合は、前回「3Dスキャナー活用で設計力の向上、設計者の“働き方改革”を実現する」をぜひご覧ください。
3Dスキャナーの方式は、大きく分けると「接触式」と「非接触式」の2つがあります。接触式は文字通り、センサーやプローブ(探針)と呼ばれるものを対象物に接触させて、その接触点の3次元座標を取得します。非接触式は、対象物に接触せずに物体形状のデータを取得します。
非接触式の方式としては、主に「光投影法」と「レーザー切断方式」の2種類が存在し、いずれも対象物に照射した光やレーザーをカメラで読み取り、三角測量の原理でデータを取得します。
光投影法では、しま模様やQRコードのようなパターン光を対象物に当てて、投影されたパターンの歪みを基に形状認識が行われ、対象物の立体形状を空間コード化法によってデータ化します。この方式では、ハイスピードで正確なスキャンを行うことが可能ですが、明るい場所での計測を苦手とします(周囲の明るさによって、パターン光をうまく認識できないため)。
一方、レーザー切断方式では、対象物にスリットレーザー光を当てて、その反射光をカメラなどで受け、三角測量の原理で対象物との距離情報を得ることでデータを取得します。一般的に、光投影法と比べて形状取得に時間がかかりますが、高精度でデータを取得でき、光投影法が苦手とする明るい場所での計測や光沢のある物体の形状取得も比較的やりやすい方式となります。
また、非接触式3Dスキャナーには、「据え置きタイプ」と「ハンディータイプ(ハンドヘルド)」の2種類があります。一般的に、据え置きタイプの方が精度良く形状取得できますが、撮影位置や角度の変更などの取り回しは良くありません。
これに対し、ハンディータイプは手振れなどで精度が落ちる場合もありますが、取り回し性が高く、据え置きタイプでは撮りにくい箇所でも形状取得が可能です。このハンディータイプには、プローブ(探針)が付いた接触式のものもあります。
据え置きタイプの中には、対象物をテーブルや台座などの上に置いて、自動で回転させながら形状取得するタイプもあります。しかし、サイズの大きな物はテーブルや台座に乗らないため、その際は、本来、据え置きで固定している3Dスキャナーを動かしてデータを取得し、取得したデータを手動で合成するか、あるいは持ち運びが便利で作業性の高いハンディータイプの3Dスキャナーを活用します。
ハンディータイプには、「トラッカー式」と呼ばれる光学式/レーザー式の派生タイプのものがあります。据え置き型の外部センサーを常にトラッキングしながら形状を測定するものです。プローブでの接触式のものもあります。こちらは数m範囲での高精度な測定が可能です。他にもアーム式のものやロボットアームに3Dスキャナーを取り付けて自動計測できるものなどがあります。
一般的に、メカ設計関連の業務で用いられる3Dスキャナーの方式としては、測定物のサイズや測定精度の観点から光投影法とレーザー切断方式になりますが、他にも工場の外観や内観、建築/建設といった比較的広いエリアを3Dスキャンするために用いられる方式もあります。
代表的な方式を2種類紹介します。1つは「タイムオブフライト方式」です。こちらは、レーザーを多方向に照射して対象物に反射して返ってくるまでの時間から3次元座標を取得する手法です。もう1つは「フォトグラメトリー方式」と呼ばれ、デジタルカメラなどで撮影した視点の異なる複数枚の画像から視差情報を解析して3次元座標を取得するものです。
また、こうした3Dスキャン方式の他にも、内部形状の測定まで行える「X線CTスキャナー」(前回の記事で紹介済み)もありますので、ぜひ覚えておいてください。
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