ラズパイでRFIDを活用したトレーサビリティーシステムを構築する(その1)ラズパイで製造業のお手軽IoT活用(6)(2/2 ページ)

» 2021年02月10日 11時00分 公開
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トレーサビリティーシステム構築の課題をラズパイで解決する

 これらトレーサビリティーシステム構築の課題を解決するために次の手順で導入を行います。

  1. 各工程で物の仕分けに用いる現品票にRFIDを付ける
  2. 各工程にラズパイを設置し、RFIDを読み取り前工程ロットの情報と自工程ロットの情報のひも付けを行う
  3. 自工程生産時に前工程のロット生産時刻を見て賞味期限のチェックを行う
  4. 自工程生産完了時に自工程の製造条件をRFIDに書き込む
  5. 最終工程が完了し、出荷する際に前工程からの情報をRFIDから読み取り、ラズパイのデータベース(DB)に書き込むと同時にネットワーク経由で上位システムのDBにも書き込みを行う

 これらの手順について、セラミック製の製品を作る工程を事例に説明しましょう。

 まずは材料受入工程で複数の材料を受け入れ、それら複数の材料を配合/攪拌工程でミックスして箱に入れます。箱に入れる際に重量計で重量を測定します。これらの工程では、上記の1.で説明した現品票にRFIDを付けておきます。ラズパイは、電子かんばん※)からの情報読み取りと、ロット番号と重量計で計測した重量のRFIDへの書き込みに用います。その後、熱成形工程に部品を搬送します。

※)電子かんばん:QRコードなどの2次元バーコードに、生産に関わる一連の情報(ID、品番(背番号)、収容数、自工程、前工程、後工程など)が書き込まれた印刷物。または、RFIDチップを印刷物に添付したもの。ネットワークが敷設されている場合はネットワーク経由でダウンロードしたデータを画面に表示しますが、今回は既存のネットワークのないラインを対象にしているためこの方法を用います。

 次の熱成形工程では、生産する製品の電子かんばんの情報をラズパイで読み取り、その後、前工程から運んできた部品のRFIDから前工程のロット情報と重量情報を読み込みます。その際に、前工程の生産時刻と現在時刻を比較し、賞味期限内に入っているかチェックをします。賞味期限に入っていない場合はかんばんの読み取り画面にエラーを表示し、部品を廃棄します。賞味期限内であれば生産を行います。そして、生産時の温度などの製造条件をセンサーから読み取りRFIDに書き込みます。

 最終的に製品を出荷する際には、納入かんばんの情報をラズパイで読み込むとともに、製品のRFIDも読み込んでひも付けを行います。これらをラズパイのDBに書き込むと同時に、ネットワークで接続されている上位のDBにも書き込みます。

図2 図2 ラズパイとRFIDを用いたトレーサビリティーシステムの概要(クリックで拡大)

ラズパイでトレーサビリティーシステムを構築するメリット、デメリット

 本システム構築上のメリットとデメリットをまとめます。

メリット

  • ラズパイを使用することにより、各工程へ設置する機器を低コストに抑える
  • RFIDを使用することにより、各工程にネットワークの敷設が不要
  • RFIDを再利用することにより、ランニングコストを抑えられる
  • RFIDを使用することにより、前工程〜最終工程、出荷までの大きな電文長の履歴情報が記録可能
  • RFIDに記録している製造条件などの記録から賞味期限チェックなどを行い、不良発生防止につなげることが可能
  • 最終出荷工程のみネットワーク敷設をして上位サーバのDBに格納すれば、全社でトレーサビリティー情報を共有できる

デメリット

  • 途中仕掛かりの情報は現地現物での確認となる


 今回はまず、トレーサビリティーシステムの構築にラズパイやRFIDを使用するメリットや業務上の付加価値に焦点を当てて説明しました。次回は、ラズパイやRFIDを実際に使用したサンプルシステムで具体的に構築したシステムのイメージを紹介します。

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筆者紹介

株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)

NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、

原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。


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