解析結果の評価の流れとそのポイントについてもおさらいしておきましょう。
1.まず、解析の計算そのものに「エラー」や「ワーニング(警告)」がないかどうかを確認します。エラーの場合、解析が異常終了して答えが出ていない場合がほとんどです。ワーニングの場合、解析は一応終了して答えが出ているので、要注意です。ワーニングの内容を理解し、解析の信ぴょう性を確かめましょう
2.次に変形を確認します。動いてはいけない箇所が動いていないか、変形している方向は荷重をかけた方向と一致しているか、その大きさは常識的かを確認します。アニメーション表示を使うと小さな動きまで把握できるのでオススメです
3.そして、ミーゼス応力を表示します。特異点を除いた最大応力値と材料の降伏応力を比較します。このとき安全率を忘れないでください。ミーゼス応力が降伏応力を超えていた場合、原則として“アウト”です。より降伏応力の高い材料に変えるか、形状を変更します
4.解析結果を記録しておきます。ソフトウェアにバージョンアップがあると微妙に結果が変わる場合があります。ソフトウェアによってはレポート機能があり、解析の設定と結果をレポート形式で出力しておくことができます
形状を作るということは、部品の重量と剛性が決まってしまうということです。どれほどの人がそれを意識しているでしょうか。設計をしているとき、つまり3D CADを使っているときは、どうしてもモデルの作成に意識が集中してしまいます。
一般的に、形状を詳細化すればするほど剛性が落ちていきます。モデルを作り始めた初期段階で強度的にアウトであれば、詳細に作り込んでいく過程の中でモデルの強度を高めることはできません。
3Dモデルが完成してから解析を行うと、設計性能が不十分だった場合、そこからの手戻りは非常に大きなものになります。設計性能を決定する要所要所で設計パラメーターの決定に解析を使うことを「In Process CAE」としました(図5)。
大きなフィーチャー(穴や切り欠きなど)を作成するとき、その節目に解析を行って形状の妥当性を強度検証します。それを積み重ねれば、最終的には強度検証が十分な3Dモデルが完成します。
要所要所で解析を行うことは、設計の思考を中断しなければならないので、面倒に感じるかもしれません。しかし、最近の3D CADは解析モジュールが実装されており、3Dモデルと解析がシームレスにつながっていますので、それほど手間ではありません。また、メッシュを作成しない製品も登場しています。モデリングを進めると瞬時にモデル上に応力が表示されます。
ぜひ、設計のワークフローにIn Process CAEを組み込むことを検討してみてください。
宇宙飛行士のニール・アームストロングは月面に降り立った時に、「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉を残しました。
構造解析のはじめの一歩は、あなたにとって小さな一歩かもしれませんが、会社にとってはそれが大きな進歩となるはずです。“次の一歩”に向けて、ぜひ頑張ってください。長期間、本連載にお付き合いいただき、ありがとうございました! (連載完)
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