オリンパスが大腸内視鏡AIソフトを拡充、浸潤がんや潰瘍性大腸炎を高精度に診断人工知能ニュース(1/2 ページ)

オリンパスは、大腸の超拡大内視鏡画像をAIで解析し医師の診断を補助するソフトウェア「EndoBRAINシリーズ」において、腫瘍や浸潤がんを高精度に判別する「EndoBRAIN-Plus」と、潰瘍性大腸炎の炎症状態を高精度に評価する「EndoBRAIN-UC」を追加し、同年2月5日に国内発売すると発表した。

» 2021年01月28日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 オリンパスは2021年1月27日、オンラインで会見を開き、大腸の超拡大内視鏡画像をAI(人工知能)で解析し医師の診断を補助するソフトウェア「EndoBRAIN(エンドブレイン)シリーズ」において、腫瘍や浸潤がんを高精度に判別する「EndoBRAIN-Plus(エンドブレインプラス)」と、潰瘍性大腸炎(UC:Ulcerative Colitis)の炎症状態を高精度に評価する「EndoBRAIN-UC(エンドブレインユーシー)」を追加し、同年2月5日に国内発売すると発表した。両製品とも価格は150万円で、国内に約1万500ある大腸内視鏡施行施設のうち約1500施設を占める基幹病院を中心に提案を進め、発売から3年間で約150台の販売を目指す。また、EndoBRAINシリーズ全体では1000施設への導入を目標としている。

オリンパスの小林功氏 オリンパスの小林功氏 出典:オリンパス

 同社の中核事業である医療分野の主力製品となっているのが世界シェア70%に達する消化器内視鏡だ。国内における医療分野の連結売上高1085億円のうち、内視鏡事業が約6割に当たる655億円で、残りの4割が治療機器事業となっている。オリンパス 内視鏡事業国内マーケティング バイスプレジデントの小林功氏は「食道から胃、十二指腸、小腸、大腸に至るまで、消化器における疾患の早期診断と低侵襲治療で当社の製品が役立っている」と語る。

 2019年3月に発売したEndoBRAINシリーズは、昭和大学横浜市北部病院、名古屋大学病院、サイバネットシステムが、AMED(日本医療研究開発機構)の支援の下で開発しており、内視鏡分野では国内で初めて薬事承認を取得したAI製品となっている。オリンパスは、薬事承認を取得したサイバネットシステムからEndoBRAINシリーズの国内における独占販売権を得ており、今回発表した2製品もオリンパスが国内販売を担う。

「EndoBRAINシリーズ」の販売ターゲット 「EndoBRAINシリーズ」の販売ターゲット。新製品の「EndoBRAIN-Plus」と「EndoBRAIN-UC」は基幹病院を中心に展開する(クリックで拡大) 出典:オリンパス

大腸浸潤がんの高精度の診断をより多くの医師が行えるように

 EndoBRAINシリーズはこれまでに、オリンパス製超拡大内視鏡「Endocyto」で撮影した画像から大腸ポリープの腫瘍/非腫瘍を鑑別する「EndoBRAIN」(2019年3月発売)と、ポリープやがんなどの病変候補を検出する「EndoBRAIN-EYE」(2020年8月発売)を展開している。今回発表した2製品のうちEndoBRAIN-Plusは、EndoBRAIN-EYEによる病変検出やEndoBRAINによる腫瘍/非腫瘍の鑑別の後の治療法を選択する診断プロセスで用いられるもので、鑑別した腫瘍が外科手術が必要な浸潤がんか、内視鏡治療で対応できる腺腫(良性腫瘍)かについてAIによるリアルタイム解析で高精度に診断することができる。

「EndoBRAINシリーズ」の各製品の位置付け 「EndoBRAINシリーズ」の各製品の位置付け(クリックで拡大) 出典:オリンパス

 実際の性能評価試験では、浸潤がんの判別について感度91.8%、特異度97.3%という診断精度が得られたという※1)

※1)「感度」は、浸潤がんの病変の画像のうち、正しく浸潤がんと診断できた画像の割合。「特異度」は浸潤がんではない病変の画像のうち、正しく浸潤がんではないと診断できた画像の割合。

昭和大学横浜市北部病院の三澤将史氏 昭和大学横浜市北部病院の三澤将史氏 出典:オリンパス

 なお、EndoBRAIN-Plusによる診断を行う際には、通常の内視鏡観察に対して520倍にもなる超拡大内視鏡観察を、染色液のメチレンブルーを用いて生体内の細胞核が観察できるようにする必要がある。「超拡大内視鏡画像は、病理診断を行う医師が治療法を決定する際に用いる病理画像に近い画像が取得でき、診断も高精度に行えるという実績がある。しかし、その高い診断精度は十分に訓練を積んだ医師でなければ実現できなかった。この高精度の診断を、より多くの医師が行えるようにするために開発したのがEndoBRAIN-Plusだ」(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター 講師の三澤将史氏)という。

 EndoBRAIN-Plusは、EndoBRAINと同様に非ブラックボックス型のSVM(サポートベクターマシン)ベースのAIで、染色後の内視鏡画像をテクスチャ解析により312次元の特徴量に変換している。そして、撮影した画像に対して、リアルタイムに非腫瘍、腫瘍、浸潤がんのいずれに当たるかを推定し出力する。

「EndoBRAIN-Plus」による診断の補助のイメージ 「EndoBRAIN-Plus」による診断の補助のイメージ(クリックで拡大) 出典:オリンパス

 三澤氏は「早期発見した大腸がんのうち、粘膜下層に深く浸潤し肺や肝臓などへの転移もあり得る浸潤がんと、内視鏡治療が可能ながんを正確に区別するのは難しく、感度で70%、特異度で70%という報告もある。EndoBRAIN-Plusであれば、それを大きく上回る精度で診断を補助してくれる。EndoBRAIN-EYE、EndoBRAIN、EndoBRAIN-Plusを連携することで、病変の発見から治療に向けた診断までの一気通貫での支援も可能だ」と説明する。

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