2020年12月3日、Team Cross FAの幹事企業であるロボコム・アンド・エフエイコムが福島県南相馬市に、省人化や省エネルギー化を実現する仕組みを備えたスマートファクトリーを建設中だ。同工場は希望者向けに場内見学を可能な範囲で受け付けている。Team Cross FAの天野眞也氏に建設の狙いなどを聞いた。
製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目的としたコンソーシアム「Team Cross FA(チームクロスエフエー)」は2020年9月10日、既報の通り東京都内に「SMALABO(スマラボ) TOKYO」をオープンした。同施設ではAGV(自動搬送ロボット)や産業ロボットを連携させた生産ライン「DX型ロボットジョブショップ」などを展示しており、見学者に、自社工場への自動化技術導入イメージを分かりやすく伝える狙いがある。
そして次のプロジェクトとして、Team Cross FAの幹事企業であるロボコム・アンド・エフエイコムが福島県南相馬市に、省人化や省エネルギー化を実現する仕組みを備えたスマートファクトリーを建設中だ。Team Cross FAのプロデュース統括であり、ロボコム・アンド・エフエイコム 代表取締役の天野眞也氏は「建設中の工場は、Team Cross FAによるDX推進の取り組みの“第3弾”として位置付けており、希望者は場内の見学も可能にする予定だ」と説明する。
見学を通じて、具体的にどのような内容を見られるのか。SMALABO TOKYOの現状と併せて、天野氏に話を聞いた。
MONOist オープンから3カ月程度が経過(取材は2020年12月に実施)しましたが、SMALABO TOKYOの反応はどうですか?
天野眞也氏(天野氏) 来場企業数は170〜180社で、人数ベースでは600〜700人程度が訪れている。見学に来るのは大企業が多く、中小企業は全体の3割程度だ。
業種として一番多いのは製造業だが、製造機器やスマートエネルギー、物流関連を手掛ける大手総合商社や準大手商社も多い。この他、メガバンクや地銀などの金融機関や、ソフトウェアベンダー企業、地方公共団体の担当者が来場することもある。金融機関や地方公共団体は、地元の中小製造業をどうにかして活性化したいという問題意識を抱えており、これを解決する手段としてDXに着目している。
顧客の反応という点では、DX型ロボットジョブショップへの反応が好調だ。スマートファクトリーと聞くと、ロボット化などを通じた自動化というハードウェア方面に目が行きがちである。実際、DX型ロボットジョブショップでもロボットを活用しているが、「DXで一番重要な点はカンコツ分野の言語化である」というポイントを来場者に伝えたいと考えており、これがしっかりと理解してもらえていると感じる。
ただ、訪問して「大変勉強になりました」で終わってしまう企業がいることは悩ましい問題だ。実際のところ、DXに興味はあっても現状のシステムや仕組みの維持を望む企業は多い。SMALABO TOKYOは、たとえ現時点で具体的なアイデアはなくても、リスクをとって「何かを変えたい」と思っているイノベーター気質の人が集うプラットフォームになるよう努めたい。
MONOist 企業が現状維持を望む理由は何でしょうか。
天野氏 製造業を取り巻く昨今の現状に現状認識が甘く、未来をイメージする力が不足しているのではないか。「日本は大丈夫だ、ピンチはこない」という考えの人が多いように思う。もちろん、そうであればいいのだが、実際には製造業は緩やかに衰退しつつあり、「備えがあれば憂いなし」という構えでDXを含めた改革に取り組む姿勢が必要だろう。
MONOist SMALABO TOKYOを運営する中で見えてきた課題はありますか。
天野氏 SMALABO TOKYOは、小説や映画に例えると3部構成の第2部に当たる。第1部は2018年5月に栃木県小山市に開設した「SMALABO OYAMA(小山)」である。知能化した物流、産業用ロボット展示とIoT(モノのインターネット)設備を組み合わせた展示がある。この他、SIerのエンジニア教育も手掛けている。
SMALABO TOKYOは、SMALABO OYAMAの“続編”に当たる位置付けで、両施設の展示内容は少なからず連続性がある。ただ、両施設ともにあくまでショールームなので、数工程しか展示していない上、使用しているワークもサンプル品だ。こうした展示ではなくて、実際に製品量産を行う、本当の意味でのスマートファクトリーを体験してもらう場として建設しているのが南相馬市の工場である。
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