2020年に公開したMONOist組み込み開発フォーラムの記事をランキング形式で振り返る。1位に輝いたのは、多くの期待を集める新方式の二次電池の記事でした。
2020年という1年を語るときに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のことを外すわけにはいきません。年明けから世界的に感染拡大が始まったことにより、MONOistでもCOVID-19による製造業への影響に関する記事を掲載するとともに、特設サイトも開設するなどして対応しました。特設サイトは現在も更新しているのでご確認ください。
⇒特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曽有の試練」
COVID-19の感染拡大は、組み込み業界にニッチながら新たな需要を呼び起こしました。それは体温の高い人を識別するサーモグラフィーや、“密”な状態であることを検知するCO2センサーやカメラなどの感染予防を目的とするシステムです。さらに、これらのシステムはより高度な検知を行えるようにAI(人工知能)が組み込まれ、さまざまなシステムと連携できるようにIoT(モノのインターネット)化した形で提案されたこともポイントです。組み込み業界の中でも、アジャイルにDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れて製品やサービスが提供されたのがこれらのシステムというわけです。
そんな2020年、最も多く読まれたのは一体どんな記事だったのでしょうか。2020年にMONOist組み込み開発フォーラムで公開した記事のランキング(読まれた回数)ベスト3とトップ10、そして(編集担当が)興味深かった記事を幾つか紹介したいと思います。
第1位に輝いたのは、「村田製作所は全固体電池を2020年度中に量産へ、リチウムイオン電池も高出力化」でした。そして第2位は「鉛バッテリーがリチウムイオン電池を超える、古河電工がバイポーラ型蓄電池で」となりました。両記事とも、従来とは異なる新しい方式の二次電池ということで多くの方の興味を引いたようです。
村田製作所の全固体電池は2019年10月開催の「CEATEC 2019」で発表したものですが、開発は順調に進んでおり、当初計画通り2020年度中に量産を開始するとのことです。同社の全固体電池は基本的には機器に組み込む電子部品として利用するものであり、EV(電気自動車)など向けではありませんが、それでも最大25mAhという電流容量を実現していることは大きな成果と言っていいでしょう。
2020年12月15日に公開した研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」は、エネルギー関連事業に注力する方針を示しており、今後も村田製作所の電池関連の取り組みからは目が離せません。
一方、古河電工と古河電池が発表した鉛バッテリーをベースとするバイポーラ型蓄電池も大きな注目を集めました。鉛バッテリーという二次電池としては枯れた技術を用いながらも、電力貯蔵用蓄電システムを構築する場合にリチウムイオン電池と比べてトータルコストを半減できるとしています。
また、6位にも『東芝が「世界初」の水系リチウムイオン電池を開発、低温対応と長寿命を実現』が入っています。政府が2050年までを目標とするカーボンニュートラルを宣言したこともあり、今後もこれらの電池技術には注目していきたいと思います。
第3位に入ったのは『新型「iPad Pro」のLiDARスキャナ、ToFセンサーは安価な直接方式を採用」でした。
2020年発表のアップル(Apple)製品で最も注目を集めたのは「iPhone 12」もしくはArmべースのSoC「M1」を新たに採用したPC「Macintoch」の新モデルかと思います。ただ、MONOistの組み込み開発フォーラム的には、新型iPad ProだけでなくiPhone 12のハイエンドモデルである「iPhone 12 Pro」や「iPhone 12 Pro Max」にも搭載されたLiDARスキャナを推しておきたいと思います。
何というか、高コストの部品を使わずにソフトウェア技術を活用することでさまざまなデバイスに幅広く適用できるようなシステム構成や、技術の名称として知る人ぞ知る言葉だった「LiDAR」を採用するマーケティングセンスを含めて、極めてアップルな機能など思います。
第4〜10位については、以下のランキング表から記事内容を確認していただければと思います。
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