DX2022、そして2030年を見据えた長期ビジョンに向けて、事業ポートフォリオマネジメントの評価軸として「収益性」「成長性」「戦略適合性」の3つを新たに設定した。収益性については、事業別にROIC(投下資本利益率)で評価していくことになる。成長性は売上成長率で見ていくが、市場ポテンシャル、事業持続性など「継続的に勝てるか」(山名氏)も合わせて確認する。戦略適合性では、新たな価値創造プロセスの中核に位置付けた画像IoTプラットフォームとの連携や10年後に育つ可能性などで評価し、「足元の数字だけでは判断しない」(同氏)としている。
これら3軸の評価軸を基に現在の事業についても評価しており、センシング、インクジェットコンポーネント、機能材料、プロダクションプリントは収益性と成長性を期待できるコア事業、オフィスプリンティングは市場環境が厳しいものの安定収益事業となっている。今後の成長を期待するプレシジョンメディシン(個別化医療)、画像IoTソリューション、ワークプレイスハブ/ITソリューション、産業印刷が戦略的新規事業に位置付けられる。そして、マーケティングサービス、光学コンポーネントの2事業については低収益事業として、他社との協業による事業継続や売却なども想定しているとした。
これらの評価軸に基づく事業ポートフォリオ転換を進めることで、まずは4つの事業から成る戦略的新規事業の売上高比率を2019年度の14%から、2022年度は22%に伸ばし、2020年代半ばには29%まで拡大したい考えだ。営業利益の構成比率も、2019年度にデジタルワークプレイス事業(オフィス事業)が49%を占めていたところを、2020年代半ばには25%まで抑える方針である。
この事業ポートフォリオ転換に向けて、複合機などのハードウェアの販売に依存していたオフィス事業は、ワークプレイスハブ/ITソリューションなどによるDX化や分散化支援に軸足を置いたデジタルワークプレイス事業としていく。山名氏は「プリントが減ってもオフィス周辺で求められるさまざまなソリューションの提供によって、デジタルワークプレイス事業の成長は可能だ」と説明する。
さらに、オフィス事業に続く柱として期待しているのがプロフェッショナルプリント事業、インダストリー事業、ヘルスケア事業だ。これら3事業では、コニカミノルタが創業時から培ってきたコア技術をベースとする「計測・検査・診断」を基盤として、それらをシステム化した画像IoTプラットフォームによって価値の増大を図る。「ただ技術を提供するのではなく画像IoTプラットフォーム化することでレイヤーアップでき、周辺開発のスケールが広がり、アライアンスも作りやすくなる」(山名氏)。
なお、プラットフォーム化によるビジネスモデルの進化としては、デジタルワークプレイス事業はワークプレイスハブ、インダストリー事業は2020年11月に発表したばかりの画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」、ヘルスケア事業は開発進行中の「Multi-Omics Platform」になる。山名氏は、これらのプラットフォームの基盤の1つとなる画像AI(人工知能)について「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のような大規模データをクラウドで解析するものと競合するつもりはない。現場へのクリティカルパスとなるような、高精度、高品質、リアルタイム性にこだわり、対象も人行動、検査、先端医療に絞る」と述べている。
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