コニカミノルタはオンラインで会見を開きコロナ禍で加速する事業を紹介した。このうち画像IoT事業については、同社傘下のMOBOTIX製サーマルカメラが高い評価を得ており、顔認証技術の大手であるNECやパナソニックなどとの提携を拡大している。
コニカミノルタは2020年10月9日、オンラインで「コロナ禍で加速するコニカミノルタの事業について」と題した会見を開き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会環境の変化を受ける中でも今後の成長を期待する事業について紹介した。
同社 社長兼CEOの山名昌衛氏は「COVID-19の感染拡大により、人間にとって本質的なもの、本当に必要とされる商品やサービスを見極める力が高まってきており、安心安全など社会課題が鮮明に浮き彫りになっている。企業は社会的意義や存在意義の突き詰めが必須になっている」と語る。
コニカミノルタは、社会的意義として「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」を掲げつつ、人々の「みたい」という要求に応えることを顧客価値や他社との差異性に据えている。ここでいう「みたい」は、同社の祖業であるカメラやカメラ用フィルムなどと関わる「見たい」であったり、現行の事業と関わるような「看たい」「診たい」「視たい」「観たい」などになる。そして、これらを支えるのが材料、光学、画像、微細加工というコア技術であり、「みたい」に向けた「みえないモノのみえる化」を実現する枠組みとして2016年からサイバーフィジカルシステムとエッジコンピューティングを重視してきた。
コロナ禍によって、コニカミノルタの事業も主力の複合機をはじめ厳しい状況にあるが、先述した「みえないモノのみえる化」の実現によって逆に展開が加速しつつある事業もあるという。山名氏はその代表として「ワークプレイスのDX(デジタルトランスフォーメーション)」「ヘルスケア」「画像IoT(モノのインターネット)」という3つの事業を挙げたが、サイバーフィジカルシステムとエッジコンピューティングが大きな役割を果たしているのが画像IoT事業だ。
同社の画像IoT技術は、さまざまなインプットデバイスの開発から、データ学習によるアルゴリズム開発、最終的なAIシステム開発に至るまでをカバーし、顧客の現場(エッジ)で画像認識技術を生かしたAI処理を高精度かつリアルタイムに実現することを目指している。コニカミノルタ 執行役 IoTサービスPF開発統括部、画像IoTソリューション事業、映像ソリューション事業 担当の江口俊哉氏は「アルゴリズムの実装までを含めて、画像IoTに関する総合力が高いことが特徴だ」と強調する。
特にCOVID-19対応では、同社の傘下にあるMOBOTIX製サーマルカメラと組み合わせた体表温度測定ソリューションが高い評価を得ており、画像AI技術との組み合わせによる施設での検温スクリーニングでは京都の武田病院に採用されている。
さらに、MOBOTIXのサーマルカメラについては他社との連携にも積極的に踏み出している。2020年5月にはNECの顔認証技術との連携を発表した後、同年9月にはOKIのAIエッジコンピュータ「AE2100」と丸紅ネットワークソリューションズのクラウド型AI映像監視サービス「TRASCOPE-AI」と連携したソリューションの試行運用を始めている。そして10月には、NECと並ぶ顔認証技術の大手であるパナソニックの傘下で監視カメラ事業を展開するパナソニックi-PRO(アイプロ)センシングソリューションズとの連携も発表している。「MOBOTIXのサーマルカメラは、多くの人の体温をウォークスルーで正確に測定できるだけでなく、AI機能の追加によるポテンシャルの高さが連携パートナーから評価されている。今後もパートナーとともに高付加価値化を図っていけるだろう」(江口氏)。
この他、介護施設向けのケアサポートソリューションもコロナ禍の中で役立っているという。もともとはセンサーとスマートフォンを組み合わせた介護士のワークフロー変革を狙いにしたソリューションだったが、COVID-19に感染した被介護者からの感染を防止しながら介護士が的確な介護を行えるようにする “見守りシステム”として活用されている。
山名氏は「コニカミノルタ全体の業績としては、2020年5月を底に回復しつつあるが、元に戻るにはもうしばらくかかるだろう。既存の主力事業はCOVID-19によるマイナスから戻り切らないという前提に立ち、それらの事業の収益性をもう1段、2段と強くする施策は必要だろう。その一方で、今回紹介したようなコロナ禍でも加速する事業については、今がチャンスと捉えて成長事業にしていきたい。2021年度以降の業績への貢献も期待できる」と述べている。
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