これら企業の開廃業が、経済全体の生産性向上につながる新陳代謝として機能しているかという点について、存続企業、開業企業、廃業企業の労働生産性の中央値を比較すると、開業企業の労働生産性の中央値は、存続企業の労働生産性の中央値と遜色ない水準にあることが分かる(図12)。一方で廃業企業の労働生産性の中央値は、開業企業、存続企業の中央値と比べて約3割低くなっている。生産性の低い企業の退出は経済全体の生産性向上に寄与することから、一部でそうした新陳代謝が起こっていることが示唆される。
存続企業の労働生産性については平均値が上昇しており、個々の企業の生産性向上による経済全体の生産性向上が生じている状況が確認できる(図13、平均値)。また、各パーセンタイルの推移を見ると、上位10%と上位25%の値は上昇している一方で、下位25%と下位10%の値は低下していることから、存続企業において労働生産性の高い企業と低い企業の二極化が進んでいる傾向も見て取れる(図13、パーセンタイル)。
存続企業、開業企業、廃業企業の労働生産性について各パーセンタイルの水準を比較すると、上位10%の値については中央値で見た時の傾向とは異なり、開業企業の労働生産性が存続企業の労働生産性を大きく上回っている(図14)。また廃業企業は、中央値で見た時の傾向と変わらず、いずれのパーセンタイルにおいても存続企業、開業企業に比べて労働生産性が低くなっている。
しかしながら、廃業企業の上位25%の値は存続企業の中央値を大きく上回っており、生産性の高い企業の退出が一定程度生じていることも分かる。生産性の高い企業が廃業する背景には、経営者の高齢化と後継者不足があると考えられ、企業の貴重な経営資源を散逸させない事業承継の取り組みが重要性を増している(図15、図16)。
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