5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

NECネッツエスアイがローカル5Gラボを公開「SIerならではの強み生かす」製造業IoT(1/3 ページ)

NECネッツエスアイは2020年11月6日に開所した技術拠点「基盤技術センター」を報道陣に公開するとともに、同センター内に新設した「5Gラボ」を中核とするローカル5G戦略について説明した。今後3年間で100億円の売上高を目指す。

» 2020年11月17日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
NECネッツエスアイの中川貴之氏 NECネッツエスアイの中川貴之氏

 NECネッツエスアイは2020年11月12日、同月6日に開所した技術拠点「基盤技術センター」(川崎市幸区)を報道陣に公開するとともに、同センター内に新設した「5Gラボ」を中核とするローカル5G戦略について説明した。同社が得意とする防災システムを中核とした地方自治体向けの展開やCATV事業者との連携によるサービスプラットフォームの提供、都市型スマートビルディングなどに注力し、今後3年間で100億円の売上高を目指す。

 NECグループのSIerとして知られるNECネッツエスアイだが事業戦略として「デジタル×5G」を掲げている。ローカル5G事業でも、全国対応の通信インフラ施工力を生かすだけでなく「SIerとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスを早く、安く提供していく」(同社 執行役員の中川貴之氏)という。

 2019年末から国内での法制化が始まったローカル5Gだが、これまで使えた周波数帯はミリ波帯である28GHzだけで、通信制御にLTEを用いるNSA(Non Stand Alone)方式のみだった。しかし、2020年末に向けて利用可能な周波数帯が6GHz以下(サブ6)に拡大するとともに、通信制御にも5Gを用いるSA(Stand Alone)方式も制度化される予定だ。中川氏は「これまでモバイル通信キャリアのみに与えられていたライセンスバンドが民間に開放されるわけで、まさに通信の民主化といえるだろう」と強調する。

ローカル5Gで利用可能になる周波数帯域 ローカル5Gで利用可能になる周波数帯域。2019年末に28.2G〜28.3GHzが制度化されているが、2020年末には6GHz以下のサブ6を含めてさらに拡大する(クリックで拡大) 出典:NECネッツエスアイ

 ローカル5Gを活用できる市場はさまざまなものが想定されているが、NECネッツエスアイは地方自治体向けとなる「パブリック市場」と、オフィスビルをはじめとする「エンタープライズ市場」の2市場を中核にアプローチしていく。

 パブリック市場では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で進む新たな日常“ニューノーマル”によって加速する都市分散化に対応し、ローカル5Gや地域BWA(Broadband Wireless Access)、LPWA(低消費電力広域)ネットワークなどによって地域経済やサービスを支える地域ネットワークの整備を推進する。「2020年度は防災システムをはじめとする地域課題解決に向けたローカル5GのPoC(概念実証)を進めていく。2021年度から地域価値創造、スーパーシティー化に寄与するネットワークとして事業を本格化していくことになる」(中川氏)。

パブリック市場参入に向けた事業戦略 パブリック市場参入に向けた事業戦略(クリックで拡大) 出典:NECネッツエスアイ

 エンタープライズ市場では、2020年9月に発表した三井不動産との協業によるスマートオフィス向けのサブ6とSA方式を用いた共同実証が取り組みの起点となる。2021年度以降は、ビル内のネットワークをローカル5Gで統合するスマートビルに展開を拡大し、それらの知見を基にローカル5Gの需要が高いスマート工場向けの提案を進めていく。

エンタープライズ市場参入に向けた事業戦略 エンタープライズ市場参入に向けた事業戦略(クリックで拡大) 出典:NECネッツエスアイ

 ローカル5G市場におけるNECネッツエスアイの特徴は、通信工事を長年手掛けてきた知識とノウハウにある。中川氏は「ライセンスバンドは、免許申請関連を含めて、Wi-Fiに代表されるアンライセンスバンドと取り扱いが大きく異なる。われわれの通信インフラの設計、構築、運用、保守に至るまでのプロフェッショナルサービスは最大の強みになるだろう」と述べる。

ローカル5G普及の課題NECネッツエスアイのプロフェッショナルサービス ライセンスバンド特有のプロセスがローカル5G普及の課題となっている(左)。NECネッツエスアイはプロフェッショナルサービスで顧客をフルサポートする(クリックで拡大) 出典:NECネッツエスアイ

 今回開設した5Gラボは、NECネッツエスアイが提供するローカル5Gの関連システムを活用して、顧客との共創や実証のスペースとしてオープンに活用する予定だ。三井不動産と共同実証を進める日本橋室町三井タワー(東京都中央区)のショーケース施設と5Gラボをつなげた試験なども行える。また、5Gラボを開設する基盤技術センターが、NECネッツエスアイの技術者教育拠点であることから、自社の5Gに関する技術研修などにも活用していく予定である。

新設の「5Gラボ」を中核にローカル5Gの提案活動を進めていく 新設の「5Gラボ」を中核にローカル5Gの提案活動を進めていく(クリックで拡大) 出典:NECネッツエスアイ

 なお、NECグループではNEC本社もローカル5G事業に注力する方針を示している。「NECグループ内でローカル5Gに関する連絡会があり、ローカル5Gに取り組むグループ各社の強みを生かせるような連携をとるための体制がある」(中川氏)としている。

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