コンサル力を鍛えるには全ての情報を「3つ」に整理し仮説は「2段階」で立てるVUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力(6)

VUCAの時代を迎える中、製造業のエンジニアという職業は安泰なのだろうか。本連載のテーマは、そういった不確実な時代でもエンジニアの強みになるであろう「コンサルティング力」である。第6回は、現場のエンジニアがコンサル力を身に付けるための6+1つのステップのうち、2番目の「情報を集める」と3番目の「仮説を立てる/問題を見つけ出す」について説明する。

» 2020年10月14日 09時30分 公開

 前回は、コンサルティング力を身に付けるための心構えと、プロセスの第1段階に当たる「情報を集める」について説明しました。今回は、第2段階の「情報を整理する」と第3段階の「仮説を立てる/問題を見つけ出す」について解説していきます。

⇒連載「VUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力」バックナンバー

 情報を整理する方法は、「なるべく3つにまとめてみること」──。それが大切です。2つにまとめると、重要な視点が抜け落ちてしまうことがあります。一方、4つにすると、同じ内容がダブってしまうケースがあると思います。その際、意識したいのは、「モレなく、ダブりなく」ということで、ロジカルシンキングを活用する世界ではこれを「MECE(ミーシー)=Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」といいます。モレもダブりもなくすことを意識してなるべく3つにまとめていくということです。

 情報を整理する力は、仕事だけでなく、生活のあらゆる場面で鍛えることができます。新聞やテレビのニュースで出てきた論点を3つにまとめてみるのもいいですし、お昼に何を食べるかを考えるときでも、選択肢を3つ意識してみることができます。例えば、ぱっと思い付くのは「和食」「洋食」「中華」という感じです。

 簡単な場合はよいのですが、現実の仕事などで考えると、最初のうちは、「どうしても4つや5つになってしまう」場合や、「2つしか思い付かない」という場合もあるでしょう。3つより多くなった場合は、「意味あい」や「もう一つ上の概念」を考えてみてください。そして、2つになってしまった場合は、3つ目がある可能性がある、または情報が足りていない可能性があるかもしれません。その際は、もう一度前段階の「情報を集める」に戻ってみましょう。

 これは全てのケースに当てはまるわけではありませんが、「過去」「現在」「未来」や「市場」「競合」「自社」といったフレームワークを活用して情報を整理するのも有効な方法です。また、できるだけまとめるときは「単語」ではなく「フレーズ」にすることを心掛けていくと、意味や内容がより明確にできます。

事実を「観察」し、問題の本質を「洞察」する

 第3段階の「仮説を立てる/問題を見つけ出す」も、考え方は比較的シンプルですが、訓練が必要です。このプロセスは「観察的要約」と「洞察的要約」の2つに分けられます。

 「観察的要約」とは、「情報を整理する」段階で得られた3つの項目を事実ベースでそこから何が起きているのか? を要約することです。その際に意味するところは何かというと、思い込みなどの価値判断を加えることを避け、あくまで事実を率直に直視することが必要です。

 例えば「コロナウイルスがはやっている」「数日前から倦怠感がある」「今朝から高熱が出ている」という3つの現象がある場合、これらの事実をまとめると「コロナウイルスが流行している中、倦怠感と発熱を伴った体調不良が発症した」となります。

 ここから原因となる問題を見つけ出すに当たって必要なのが、「洞察的要約」です。この場合は、「コロナウイルスに感染した」となるでしょう。洞察のポイントは、この問題の原因は、「なぜ起きたのか?」「どうなっているのか?」など、「理由」を考えてみることが重要です。

 洞察的要約から原因となるものを考える場合は、正確性を証明する必要があります。もし十分な証明ができない場合は、証明情報が足りていないか、情報の整理が不十分であるかのどちらかとなりますので、情報をそろえてより洞察した問題が本質的な問題であることを証明していきます。

筆者プロフィール

株式会社VSN 太田 剛

photo

大手メーカーへ新卒入社し、エンジニアとして勤務後、2005年にVSNへ中途入社。エンジン、トランスミッション、エアーバッグ、カーオーディオ、ブレーキ、メーターなどの頭脳部分となる車載用マクロコンピュータの開発に従事後、エンジニア全体の組織の管理職としてエンジニアの組織化を推進。

現在は、VIコンサルティングオフィスの室長として、コンサルティングサービスを促進するとともに、取引先企業の経営層に対する戦略コンサルティングサービスを担当する他、問題解決の育成プログラムの構築から実施を行う。

Modis VSN https://www.modis-vsn.jp/
(株式会社VSNは、事業ブランドの名称をModis VSNに変更しました)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.