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» 2020年08月26日 14時00分 公開

小型GPUで高精度AIを動かすには? 運転支援デバイス開発に挑む気鋭ベンチャーモノづくりスタートアップ開発物語(3)(2/4 ページ)

[大沼慶祐(DMM.make AKIBA)/河野正一郎(テックベンチャー総研),MONOist]

「人の役に立つモノ」を作り続けたい

――危険を感知するとドライバーにアラートを出すというPyrenee Driveですが、正直に言うと、こうした類似の運転支援デバイスは他社でも開発していそうな印象があるのですが。

三野龍太氏(以下、三野氏) 海外に2社ほど、当社と同じく後付けするタイプの運転支援デバイスを開発する企業はあります。ですが、それらの企業が開発する製品に比べてPyrenee DriveはAIの技術をフル活用している点で大きく異なります。AIで自動車や歩行者などの今後の動きを予測して、早いタイミングでドライバーにアラートを出せる点が特徴です。加えて、ユーザーの走行データを常にAIに追加学習させることで、認識精度や予測精度を上げ続けていくシステムにもなっています。

――三野さんは、若い頃から自動車技術の開発現場にいらっしゃったのですか。

三野氏 全く違います。高校を卒業して最初に就職したのは建築工具のメーカーで、そこで製品開発を経験しました。大学進学のための受験勉強はしていたのですが、いつか起業したいという夢があり、その近道になると思って就職の道を選んだんです。親には大反対されましたが。

 その後、25歳で起業し、文具や雑貨を作る会社を立ち上げました。新聞がバラバラになるのを防止するクリップや、ドアノブでけがする子どもを減らしたいと思って作った「ワッフルハンドル」などがヒットして、これらは今も売れています。もともと、人の役に立つモノを作るのが好きだったのだと思います。

三野氏が制作したクリップやワッフルハンドル[クリックして拡大] 三野氏が制作したクリップやワッフルハンドル[クリックして拡大]

――雑貨と安全運転支援ではだいぶ分野が違いますが、何か事業転換を決意するきっかけがあったのですか。

三野氏 これといったきっかけはありません。ただ、私はほとんど毎日クルマを運転しているのですが、運転中に「もっと人に役立つものはないか」「人の生活になくてはならないものは何か」と考える癖がありました。そんなことを考えていたら、ある時、ふと道の端に、おそらくは交通事故現場に手向けられた花束が目に入ったのです。

 その時から「交通事故を無くせるデバイスを開発すれば人の命が守れる、人の役に立つのではないか」と考えるようになり、2016年にPyreneeを設立した次第です。38歳のときでした。40歳を前にして「残りの人生をこれに賭けてみよう」という思いが背中を押したのかもしれません。

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