発売40周年のウォシュレット、「洗浄ノズルをくわえられるのか」にみる進化の魂小寺信良が見た革新製品の舞台裏(15)(2/4 ページ)

» 2020年08月19日 10時00分 公開
[小寺信良MONOist]

CMで一躍大ヒット商品に……なったわけではない

―― ウォシュレットと言えば、1982年に戸川純さんが「おしりだって、洗ってほしい」というテレビCMで一躍認知度を高めたわけですが、やはりあのCMの成功が大きかったわけですか。

松竹 皆さんそうおっしゃるんですけど、実はそうでもありません。1992年に温水洗浄便座に関する内閣府の調査が始まるんですが、ウォシュレットの発売から12年たった1992年の時点でも普及率は14%ほどです。それから50%を超えるのが、約10年後の2003年です。

内閣府調査による温水洗浄便座の普及率の推移 内閣府調査による温水洗浄便座の普及率の推移(クリックで拡大) 出典:日本レストルーム工業会

 あのCMによって、世の中にお尻を洗うウォシュレットなる商品があるということは皆さん知ったんですけれども、じゃあそれを使おうかっていうところまでは至っていなかったのが実情です。既に商品として快適なものであることには自信がありました。3代前の社長の木瀬(照雄氏)も「3回使ってもらえば快適さが分かってもらえる」と言っていたほどです。そこで、普及を進めるのに何をしたかと言えば、最初にやったのが口コミで評判を広げることでした。最初のウォッシュエアシートも口コミで広がりましたから。

 1977年に和式便器と洋式便器の出荷比率が逆転してから、下水道の整備が進んでトイレも新しくなっていく時代でした。そこでまずは、温水洗浄便座の販売を担う水道工事店の自宅に付けてもらい、工事店の奥様に使ってもらうようにしました。「実は自宅で使っているんだけど、こんなに快適なんです」ということを、奥様からお客さまやご友人などに伝えてもらうなどしました。そういった形で、地道に口コミで広げていったというのが真相です。

 他にも、ウォシュレットを採用しているレストランなどの場所が分かる「お尻天国」というパンフレットをショールームで配ったりしました。青山のおしゃれなOLや渋谷のイケてる女子大生が使っているというイメージですね。とにかく、一度体験してもらうということを重視して営業活動を進めていました。

「ウォシュレット」の累積出荷台数の推移 「ウォシュレット」の累積出荷台数の推移(クリックで拡大) 出典:TOTO

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