そして、今度はこれら解析結果の“妥当性”を確認するため、解析と実機のほこり濃度の比較を実施した。
実機による計測では、光散乱方式の環境濃度計測器を車載し、砂地を実際に走行しながらエアクリーナ内(1カ所)、車両後方(2カ所)の計3点でほこり濃度を実機測定し、その結果とそれぞれの解析結果との相関を調べた。
その結果について、新田氏は「エアクリーナ内の濃度を基準1とし、その他の測定ポイントが基準の何倍の濃度になっているかをグラフ化したところ、実機による測定結果に対して、PowerFLOWで質量粒子を模擬した解析結果が非常に良い相関を示した」と述べる。
続いて、実施したのは仕様間差の机上検討だ。PowerFLOW+質量粒子を用いて、車両仕様が異なる場合、その差を捉えることができるかを確認するため、あらためて解析と実機計測による結果を比較することにした。調査対象は、シートボックス底面からエアクリーナ上部間のゴムフラップの有/無についての仕様差だ。
エアクリーナ内のほこり濃度に注目し、フラップがあるスタンダード(STD)の濃度を基準1とし、フラップなしの濃度倍率を示すグラフを作成。PowerFLOW+質量粒子による解析結果の妥当性を確認してみたところ、フラップがなくなることで、エアクリーナ内の濃度が約1.2倍になるという実機の傾向を、解析結果もよく捉えていた。
「この結果から、PowerFLOW+質量粒子を用いた解析手法は、対策効果を机上検討する際に十分活用できることが分かった」と新田氏は評価する。
講演の最後、新田氏は本取り組みのまとめとして「流れ場の詳細化、質量粒子の適用により、解析によって仕様間差が精度良く確認できるようになった。今後は本解析の適用車種を増やし、さらなる妥当性の確認を行っていく予定だ。万一、現象再現性が低い場合には、粒子径分布や粒子流入条件、壁面の反発条件など、パラメータスタディーを行っていく考えだ」と、PowerFLOWを活用したほこり入り解析のこれまでの成果と、今後の展望について語った。
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