「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

MaaSを強化するモービルアイ、日本ではバスのウィラーと協業モビリティサービス

WILLERとモービルアイは2020年7月8日、日本や台湾、ASEANでのロボタクシーの提供に向けた戦略的パートナーシップを結んだと発表した。

» 2020年07月10日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 WILLER(ウィラー)とモービルアイは2020年7月8日、日本や台湾、ASEANでのロボタクシーの提供に向けた戦略的パートナーシップを結んだと発表した。

 2021年に日本の公道において、セーフティードライバーが乗車した状態でロボタクシーの実証実験を開始し、2023年には完全自動運転でのロボタクシーや自動運転シャトルのサービス開始を目指す。WILLERは日本で主に長距離バスを展開しているが、協業で使用する車両については協議を進めている。

モービルアイとMaaS

 モービルアイはADAS(先進運転支援システム)向けの画像認識技術で知られている。レベル2(“レベル2+”を含む)の自動運転システムでは、日産自動車やフォルクスワーゲン(VW)、キャデラック、アウディなど8車種向けに受注している。また、新たに13件の採用予定もあり、売り上げを伸ばしている。その一方で、モービルアイはMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車を所有せずサービスとして利用すること)事業の取り組みも強化している。

 モービルアイがMaaSを重視するのは、レベル4以上の自動運転車「ロボタクシー」の市場がMaaSによって拡大すると見込むためだ。ADASとロボタクシーの両輪で技術開発を進めており、ADAS向けのセンシングや周辺認識、マッピングのコンポーネントや技術がロボタクシーにも生かされているという。ロボタクシー向けに開発してきた技術がADASの高度化につながっている部分もあるとしている。ADASの収益を生かしてロボタクシーの開発に継続して投資していく方針だ。

 モービルアイのロボタクシーの取り組みは、VWやディーラーのCHAMPION MOTORSと立ち上げた合弁会社「Pinta」からスタート。VWが車両を提供し、CHAMPION MOTORSが車両のオペレーションやコントロールセンターの管理を担う。モービルアイは画像処理用SoC(System on Chip)「EyeQ」だけでなく、自動運転システム全体を提供する。

 フランスでは、パリ交通公団のRATP(Regie Autonome des Transports Parisiens)グループと協業。モービルアイの自動運転技術を使った交通ソリューションの展開を目指す長期的なパートナーシップだ。自動運転技術にRATPグループのモビリティサービスの専門知識を融合し、海外展開も視野にロボタクシーの展開の見込みを調査する。また、2020年にテスト走行を開始するという。

 中国では上海蔚来汽車(NIO)との協力を発表。NIOはモービルアイの自動運転システムを組み込んだ、個人所有向けのレベル4の自動運転車を生産する。また、その派生モデルとして、NIOはモービルアイ専用のロボタクシーを生産する。NIOが採用した自動運転システムは、EyeQのSoC、ハードウェア、ドライビングポリシー、セーフティーソフトウェア、マッピングソリューションで構成されている。NIOとの協業には、中国におけるマッピングライセンスも含まれる。

 2020年5月にはインテルがMaaSアプリを手掛けるMoovitを約9億ドル(約966億円)で買収。ロボタクシーだけでなく移動ルートを提案するアプリも含めた移動のソリューションを提供することを目指している。

 WILLERとの協業では、モービルアイは自動運転技術と車両を提供する。モービルアイは、市販車両をベースに自動運転が可能な実験車両を仕立てるノウハウも持つ。また、WILLERは、日本や台湾、ASEANの各地域に合わせたサービスデザインや規制の要件の整理、サービス運用中のモビリティの管理、運行会社向けのソリューション開発を担う。

モービルアイとウィラーの分担(クリックして拡大) 出典:モービルアイ

市街地での実力は

 モービルアイは、本社を構えるエルサレムで公道実証を行なっている。エルサレムは交通量が多く、道路の幅が決して広くないにもかかわらず、両方の路肩に路上駐車が連なっている。また、交通量が多い中で信号機のない交差点やラウンドアバウトを通行する場面も多い。

 こうした環境下でもスムーズかつ安全に自動運転車が走行するため、画像認識技術と独自の安全運転のフレームワーク「Responsibility-Sensitive Safety(RSS:責任感知型安全論)」を活用している。12個のカメラを搭載した車両で、信号のない場所で対向車両の速度が落ちたタイミングを見計らって左折したり、ラウンドアバウトで他の車両や横断歩道を渡る歩行者と譲り合いながら走行したりすることが可能になっている。

カメラのみの自動運転システムで市街地を走行する様子(クリックで再生)

 また、カメラだけでなく、ミリ波レーダーやLiDAR(ライダー、Light Detection and Ranging)を使ったシステムについても開発を進めている。

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