サイプレス セミコンダクタは2020年6月24日、機能安全とセキュリティ機能を両立したNORフラッシュメモリ「Semper Secure」の発売を発表した。自動車の機能安全規格ISO26262の安全要求レベルで2段階目に当たるASIL-Bに準拠した設計のメモリに、セキュリティ機能を搭載するという「業界初」の試みを取り入れた。
サイプレス セミコンダクタは2020年6月24日、オンラインで記者会見を開催し、機能安全とセキュリティ機能を両立したNORフラッシュメモリ(以下、NORフラッシュ)「Semper Secure」の発売を発表した。自動車の機能安全規格ISO26262の安全要求レベルで2段階目に当たるASIL-Bに準拠した設計のメモリに、セキュリティ機能を搭載するという「業界初」の試みを取り入れたという。
近年、コネクテッドカーやスマート工場に注目が集まるにつれて、組み込みシステムに用いるNORフラッシュの需要が高まっている。だが、NORフラッシュはセキュリティ攻撃の標的となるリスクもある。サイプレス セミコンダクタを2020年4月にグループ傘下に収めたインフィニオンの子会社Infineon Technologies LLC Memory SolutionsでCEOを務めるサム・ジャハ(Sam Geha)氏は「ネットワークに接続されたシステムにNORフラッシュが使用されている場合、第三者による不正アクセスでシステムが機能不全に陥ったり、メモリ上のデータが書き換えられたり、盗まれたりする危険性がある。この他にもホストのマイクロコントローラーに成りすましてサービスやコンテンツを不正利用する、マイクロコントローラーとNORフラッシュの間をハッキングしてフラッシュメモリ内のデータを書き換えるリプレイ攻撃を仕掛けてくる可能性もある」とセキュリティ脅威を解説した。
またジャハ氏は、現在はSoCに内蔵されているフラッシュメモリが将来的には非搭載になるという予測があるとした上で「今後技術開発が進み、プロセスノードが28nm以下のマイクロコントローラーが一般化した場合、内蔵式のフラッシュメモリではコストと拡張性の面で十分な性能を発揮できるとはいえない。こうなるとシステム全体のセキュリティを保護する方法を内蔵式のフラッシュメモリ以外に見出さなければならないが、その役割を担うのがSoC外部のNORフラッシュとなる」と説明した。
こうした業界の将来的トレンドを見越して、サイプレス セミコンダクタが新開発したNORフラッシュ製品のSemper Secureだ。ISO26262のASIL-Bに準拠した設計となっており、また、組み込みメモリに必要なセキュリティ機能を搭載している。RoT(Root-of-Trust)チップとして機能し、エンドツーエンドでシステムをセキュアに保つ。
動作電圧は1.8Vと3.0V。容量は128MB、256MB、512MBの3タイプが用意されている。読み出し速度は最大で400Mbps。
「ISO26262 ASIL-Bに準拠した設計自体は、当社が以前発売したNORフラッシュ『Semper』で既に実現している。Semper Secureではこれに加えてセキュリティを強化するために、いくつかの機能を追加で搭載しており、ここが新しい」(ジャハ氏)
Semper SecureのアーキテクチャはSemperで既に実用化されていた技術を基に構築されている。例えばメモリアレイには45nmのMirrorBit、CPUにはArm製の「Cortex-M0」が用いられている。インタフェースはQuad SPI(Serial Peripheral Interface、Octal SPI、HyperBusに対応。またパーティションごとに長期保存用の最適化を図り、システムデザインの簡素化を実現するEnduraFlex機能も搭載している。
ジャハ氏は「コネクテッドカーをはじめ、セキュリティの懸念が高まるコネクテッドシステムにおいて、NORフラッシュは重要なパラメータデータを安全に保存する上で重要だ。Semper Secureは機能安全とセキュリティを強化したNORフラッシュである。当社は今後も将来的な課題を解決するような製品開発に取り組む」と語った。
なおサイプレス セミコンダクタはSemper Secureの256MB品の量産化を2021年第2四半期に予定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.