「どの軽がオススメ?」と聞かれたら、迷わずホンダを薦めたい車・バイク大好きものづくりコンサルタントの試乗レポート(2/3 ページ)

» 2020年05月22日 06時00分 公開

運転席に座って

 まず気付いたのはシートのソフトさだ。先代よりずいぶんお金がかかっているように感じる。そしてチルトはもちろんのことテレスコピック機構が付いたステアリングホイールは、ホンダのサイトによると「テレスコピックはホンダの軽自動車で初採用」とあるが、他に装備された軽自動車を筆者は知らない。正しい運転は正しいドライビングポジションを取らなければできない。夫婦で、そして子供たちも運転するであろうクルマには、テレスコピックは不可欠だ。ここはかなりのプラスポイントだ。試乗のためにシートの前後スライド、シートバックの角度、シートハイト、そしてステアリングの位置を細かく調整したら、違和感のないドライビングポジションを得ることができた。

 インストゥルメントパネル(インパネ)も先代とは大きく変わり、中央に丸形のアナログスピードメーターと10セグメントでデジタル表示される燃料計(セグメントは多い方がいい)、左にタコメーター(レッドゾーンは7500rpm!)、右にマルチファンクションインジケーターの三眼メーターと見やすいレイアウトになっている。CVT車にタコメーターは不要だと思うが、あればあったで嬉しい装備だ。

 面白いのはN-BOXとの違いだ。N-BOXはメーターの位置、レイアウトが全く違い、ステアリングホイールの上側からメーター類を見るようになっていて、これは見やすい。しかもスピードメーターとタコメーターが同じ大きさのアナログメーターで筆者の好みだ。

見やすい計器類(左)。N-BOXの計器類(右)(クリックして拡大)

 さてエンジンを始動しよう。スタートボタンはインパネの右下部、これは位置が悪い。メーカーはどのような基準でさまざまなスイッチの配置を設計しているのだろうか? ハザードスイッチはシフトセレクタ前方、NAVI画面の下の押しやすい位置にあるが、これは緊急性を考えれば妥当だ。使用頻度を考えたらこのスタートボタンの位置はあり得ない。例えばインパネ右端のエアコン吹き出し口に右下あたりがベストポジションではないだろうか。インパネの裏側の構造によりどうにもならない場合もあるかもしれないが、一考願いたい。

 実は先代N-WGNでも実に解せないスイッチのレイアウトがあった。給油口のオープナーと、ボンネットオープナーの位置関係だ。この2つのオープナーはどう考えても給油口の使用頻度が高い。運転席に座って操作しようとすると給油口側が死角に入ってしまい、手さぐりになるのだ。何度かに1度は間違えてボンネットを開けてしまうので、結構イライラしてしまう。どちらもワイヤーを引っ張って動作させるスイッチ(レバー)なのだから、上下を入れ替えた方がユーザー目線だと思う。

先代N-WGNの給油口とボンネットのオープナー(左)。ドライバーからはボンネットオープナーしか見えない(右)(クリックして拡大)

 次に操作するのがパーキングブレーキの解除だ。新型から電動パーキングブレーキになり、シフトセレクター右側の小さなレバーで操作するのだが、ステアリングホイールの陰に隠れて見えない。仕方がないので頭を左に傾けて位置を確認せざるを得ない。電動にしたのはブレーキのオンオフを自動制御し、信号待ちでフットブレーキを踏み続ける必要を無くしたり、パーキングブレーキのかけ忘れを防止したりする目的なのだろうが、やはり運転姿勢のまま目視で位置を確認できるレイアウトが好ましい。筆者の1番の好みはやはり左手で操作するレバー式だが、今まで軽自動車に多用されていた左足で踏み込むタイプのまま電動化してはダメなのだろうか。

安全装備の充実

 全てのグレードに装備可能な運転支援システム「ホンダセンシング」は最新版で、ついにアダプティブクルーズコントロール(ACC)がストップ&ゴー機能を持つ全車速対応になった(非装備も選択できるが6.5万円安いだけで、カタログやサイトには掲載されていなので装備しない手はないだろう)。これで渋滞時も両足はフリーだ。

 ACCの効果は「足が楽」なことだけではない。適切な車間距離保持と、無意識のうちに速度が上がってしまうことの防止で安全運転面の効果が大きい。筆者は愛車を年間3万kmほど走らせるが、そのうち90%が高速道路だ。GPS搭載のレーダー探知機に表示される車速がちょうど制限速度になるようにACCの設定速度を合わせ、車間距離は最長にセットすれば、速度取り締まりを気にすることなく安全かつ快適に走行できる。ACCでないクルーズコントロール機能を持つクルマを運転する時にACCに慣れていると不意に前車との車間距離が詰まってヒヤッとしてしまうことがある。

ステアリングスイッチは操作感が良いとはいえなかった(クリックして拡大)

 ただ、そのACCをはじめとする安全装備を操作するステアリングスイッチに若干問題がある。ステアリングスポーク右にACCとマルチインフォメーションディスプレイ、左にオーディオとハンズフリー電話の操作機能という配置だが、ボタンが小さく、またお世辞にも操作感が良いとはいえない。

 ホンダセンシングはカメラによる標識認識機能も採用しており、メーター内には制限速度が表示される。自転車も感知できる自動ブレーキなども含め高いレベルの安全装備がグレードの関係なく装備されていることは素晴らしい。後席ヘッドレストがオプションだった時代はそう昔の話ではないが、隔世の感がある。

 もう1つ、特筆すべき装備がある。デフォルトで自動点灯かつハイビームへの自動切り替えを行う「オート」にセットされるヘッドランプスイッチだ。メルセデスベンツは随分前にヘッドライトスイッチからオフの位置をなくした。自動点灯とオートハイビームか、強制発光のどちらかしか選べない。N-WGNではオフの位置はあるものの、エンジンを始動する度にオートにセットされる。夜間やトンネルでの無灯火が最近本当に増えているが、無灯火を防止するための素晴らしい安全装置だ。これは是非全てのクルマに普及させてほしい。

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