もう1つのアプローチである製造業のリモート化については、(1)データ化・アクセシビリティ強化、(2)コミュニケーションのリモート化、(3)実物ハンドリングのリモート化を掲げる。
データ化・アクセシビリティ強化で重要なのは、いきなり「リモートだ!」「電子化だ!」というのではなく、そもそも「データの全体像を把握できているか」であるという。CADやBOMのデータなどは分かりやすいが、バインダーで管理されているような調達用の紙図面、あるいはサプライヤーの選定軸のような属人的ノウハウなどは、データに落とし込んでおかないと、リモート環境下で同じように活用することができない。また、データ化、デジタル化を進め、それらを蓄積し続けられるかどうかも重要となる。オンプレミス環境のままでよいのか、情シスがリモートで対応できるのか、なども考える必要もある。さらに、テレワーク時の接続方式(VPNで大丈夫か?)やシステム間連携をどこまで実現できているかも重要だという。
コミュニケーションのリモート化においては、社内/社外、業務内/業務外の視点から自社のコミュニケーションを分類し、そもそもの意義は何なのか、その代替として、チャットやビデオ会議システムに置き換え可能か、などを検討する必要がある。「会議などはリモート化しやすいが、例えば、ホワイトボードなどを使用して共有・管理しているプロジェクト管理や、掲示板で共有していた不良率などの情報、さらには上長とのちょっとした相談、タバコ部屋での雑談などは、どのように代替したらよいか結構悩ましいポイントだ。こうした見えない部分でのコミュニケーションが断絶してしまうと意思決定などにも影響してくる。そのため、従来コミュニケーションの代替手段の検討は極めて重要だ」(加藤氏)。
一方、最もリモート化しづらいのが、実物ハンドリング(のリモート化)だとし、検討を開始するに当たっては、実物ハンドリング業務の内容と、リモート化レベルのマトリクスを整備すべきだという。特に、リモート化レベルについては、「一時的な確認」「定常監視」「操作まで実施」「無人稼働」といった段階的なレベル分けに基づいた検討が必要となる。セミナーの中で加藤氏は、実物ハンドリングのリモート化事例として、「機械稼働の遠隔監視」「自動化・ロボット化」「リモート完成品検収」などを紹介した。
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