オシレーターの故障原因として考えられるのは、常温と低温の間を行き来する温度サイクルの影響による部品劣化だ。稲川氏は「温度サイクルがどのタイミングで発生するものであるかを科学的に、厳密に答えることは現時点では難しい。液体燃料の投入によって機体の温度は低下するし、開発時の作業で人が出入りすることで温度サイクルが生じる可能性もある。いずれにせよ、こうした温度変化がオシレーターの故障を誘発する原因となっていたようだ」と語る。
再発防止策として稲川氏らは5号機に搭載されていた全ての基板上のオシレーターを温度サイクルへの耐久性がある別品種へと交換した。その上で、温度サイクルの再現実験を行い、オシレーターが故障を起こさないことを確認。また打ち上げ直前までの機体動作や手順を全てリハーサルするフルドレスリハーサルも実施し、正常に動作することも確認した。
延期を踏まえ、新たに5号機発射に挑戦することに対して稲川氏は「5号機の発射成否には、国内でのロケット開発分野が研究室での技術実験というフェーズから本格的なロケット産業の幕開けに移行できるかがかかっている。ロケット開発の産業化はISTの当初からの念願でもある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大変な時期ではあるが、粛々と作業を進めていくつもりだ」とコメントした。
なおCOVID-19の拡大防止のため、今回の5号機の打ち上げ時には見学場は設けず、無観客で打ち上げを実施するという。代わりにYouTubeでのライブ配信を実施する。
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