イベントを運営する上で避けて通れないのが収支だ。Maker Faireほど大規模ではないとはいえ、個人のポケットマネーで続けるのは現実的ではない。NTイベントは会場費を安く抑え、机や椅子などのレンタル費は出展者が各自負担するといった工夫をして全体のコストを抑制。それと併せて会場にカンパを募る箱を設置したり、地元企業から協賛金を集めたりすることで収支のバランスを取っているという。
「会場によってはカンパだけで黒字になるが、多く集まった分は懇親会に還元したり、学生の参加費を無料にしたりしている」(akira_youさん)
「お金がないならないなりの規模でやればいいし、運営が無理をせず、個人で背負える予算でやるから続けられる」(五味さん)
小規模なイベントの場合、協賛金やスポンサー料を集めるのは難しいという話も聞く。「つくると!」はスポンサーごとに企画を提案するといった工夫を凝らしている。
「クリエイターと企業のトークセッションを用意するなどして、画一的な協賛にはならないようにしている。Maker系展示イベント特有の『そこに来た人にしか伝わらない熱気・魅力』は、企業にはなかなか伝わりにくい。理解してもらうためにはイベントに巻き込むことも重要だと思う」(松本さん)
持続可能なイベントにすべく、知恵と工夫を凝らすローカルなMaker系展示イベントの主催者たち。なぜ運営に関わり続けるのだろうか。
「作品のレベルは低くても、作ることで未来を自ら作り出せる実感がある。娯楽としてのモノづくりという側面から消費者が作るという行為を取り戻そうとしている。つまるところ、NTイベントでやっていることはメイカームーブメントの原点でもあると思う。自分たちは娯楽や消費としてのモノづくりの価値観を守り続けたいし、それに価値を感じている人が増えてきているんじゃないかと思う」(akira_youさん)
「自分はもともとメイカームーブメントに馴染みもないところから参加したが、作る人たちの熱気に感化されてファブラボにも通うようになった。自分のようなMakerではない文脈から来る人も含め、集まる人同士がフラットな関係であることがイベントを続けたいと思う動機につながっている」(松本さん)
2020年3月に予定していたNT京都はオンラインイベントに変更するなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が出ている。今後も各イベントへの影響が予想されるが、Makerがいる限りどのような形であれ、展示系イベントは続くだろうし、それをきっかけとして生まれたコミュニティーが絶えることもないだろう。 (後編終わり/次回に続く)
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