前回に引き続き、世界中で開催されるようになったMaker(メイカー)系展示イベントについて取り上げる。後編では、日本独自の発展を遂げている「Maker Faire」以外のMaker系展示イベントにフォーカスし、草の根イベントならではの運営ノウハウや継続するための秘けつを紹介する。
2020年代の「メイカームーブメント」を追う連載。前回は、世界各地で開催されている「Maker Faire(メイカーフェア)」について紹介したが、今回は日本独自の発展を遂げているMaker系展示イベントについて取り上げる。
Maker Faireを受けて「自分たちの街でも、こんなイベントをやろう」と、各地で有志がさまざまなイベントを企画している。草の根イベントならではの運営ノウハウや継続するための秘けつを伺った。
Maker系展示イベントは、何もMaker Faireだけではない。特に日本では、各地方都市で地元のMakerによる展示イベントが開催されている。最も広範囲で開催されているのが、「ニコニコ技術部有志主催のイベント(通称:NTイベント)」だ。
当初は、ニコニコ動画に「○○を作ってみた(やってみた)」というタイトルで工作や技術系の動画を投稿していたユーザーらが中心となり、手弁当で開催されていたオフラインでの交流を目的とした展示イベントだった。オライリー・ジャパンによる「Make: Japan meeting」が開催された翌年の2008年8月に、大阪府高槻市で最初のNTイベント「nico-Tech: Takatsuki Meeting ニコニコ技術部関西勉強会」が開催されると、その後、名古屋、東京、静岡、九州、神奈川と、各地で開催されるようになった。現在も全国各地で開催されており、10年間で59回と、2〜3カ月に1回のペースでNTイベントが実施されている計算となる。
NTイベントの内情や魅力について、NT札幌、金沢、京都の主催者をオンラインでつなぎ、話を伺ってみると、インディペンデントならではのユニークな広がり方や運営スタイルが浮かび上がった。
NTイベントの第1回から参加し、現在「NT京都」を主催するakira_youさん(ハンドルネーム)は、NTイベントが日本各地に広がった理由について「『無理をしないこと』に尽きる」と答える。
「NTに参加した人が『自分たちの街でもこういうイベントをやりたい』と言って、それが少しずつ広がってきた。運営は基本的に個人がやるので予算も限られているし、運営にも限界があるから運営者は無理をしないし、出展者もそれを理解しているので、自主性をもってイベントに参加している点も大きい」(akira_youさん)
一方、2014年から「NT金沢」の運営に携わる五味さん(ハンドルネーム)は、常にNTイベントのことを考えて生活していると話す。
「会議や打ち合わせで決めるというより、ラーメン屋で共同運営者の秋田さん(金沢大学 教授の秋田純一氏)とラーメンを食べながら、NT金沢のことを話すということを日常の中でやっている。NTのことについて考えることが自分の中でルーチン化している」(五味さん)
ニコニコ動画のコミュニティーから始まったイベントだが、最近ではニコニコ動画の色合いは薄れ、「YouTube」や「Twitter」など、動画が投稿できるSNSをきっかけにNTイベントを知るユーザーが増えているという。それに併せて、展示する作品のテイストも変化してきたという。
「当初はアニメやサブカルチャーに寄せた作品が多く、『初音ミク』に関係した作品が目立っていた。最近は純粋にテクノロジーを楽しむ内容の作品が増えていて、高校生や大学生がレールガンやテスラコイルなどを作っている」(akira_youさん)
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