構造解析の種類ですが、「はじめの一歩」的には図2のようになります。赤い線はそれぞれの組み合わせを表します。
除荷しても部品の形状が元に戻らない場合は、非線形となります。非線形には種類があります。本連載は、構造解析のはじめの一歩ですので、非線形解析についての詳細な解説はしません。非線形解析には、材料力学や有限要素法の座学の他に、計算力学という数値解析に関する知見が必要になります。非線形解析は「はじめの一歩」ではなく、「次の一歩」ということにしておきましょう。
しかしながら、「非線形解析でないとダメ」な解析もありますので、その種類だけ簡単に解説しておきます。
荷重と変形の比例関係が成り立たなくなった以降の状況を表すのが「塑性」です。「材料非線形」とも言います。例えば、ゴム材など金属とは大きく異なる材料を使用するときには、材料の非線形性を考慮した解析が必要となります。
材料の応力ひずみ線図を入力する必要があります。
「幾何学的非線形」とも言います。付加した荷重と変形の仕方が比例しないときには「大変形解析」を行う必要があります。カーテンレールのように長いものは、材料そのもののひずみは小さいですが、見た目で分かるほど大きく変形します。
長尺モノの他にも注意点があります。板モノの解析で、「線形静解析」(後ほど解説します)の最大変形量が板厚を超える場合には、大変形解析が必要となります。
アセンブリされた製品は、接触状態で部品同士が組み上げられています。「接触」を含む解析も非線形解析となります。接触となると、部品と部品の接触する面にさまざまな条件を設定しなければなりません。初期状態で接触しているか否か、接触面のスベリを考慮するか否か、スベるなら摩擦があるか否か、摩擦があるなら摩擦係数はどうするか……。このような条件を全ての接触面に設定しなければなりません。
次に、動解析の主要な解析についても簡単に説明しておきます。
構造物の「固有振動数」を求める解析です。構造物が壊れる原因の8割が疲労である、という調査結果があります。大きく振動するとそれは疲労を引き起こします。その対策が構造物や部品の固有振動数を知ることです。固有振動数解析が設計にどう役立つのかについても、本連載の中で解説します。
規則正しく回転するモーターやエンジンは、ある程度規則正しい一定の振動を作り出します。その振動に対して、構造物がどのように応答するのかを知るための解析です。規則正しい振動によって揺れ続けた場合、構造物の振動状態も安定します。この状態を「定常状態」と言います。
地震や風による振動は、規則正しく回転するモーターなどとは全く異なります。時間とともに変化する振動に対する構造物の応答を知るのが「時刻歴応答解析」です。建築物の話になりますが、建築基準法では、高さ60m超の超高層建築物などの構造計算を行う場合は、時刻歴応答解析法を用いることが義務付けられています。
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