この伝えがたい魅力に可能性を感じた大企業からのスポンサー収入もあり、Maker Faireは急成長のカーブを描き続けるようにも見えた。
2019年6月8日、Maker Faireを運営するMaker Mediaが破産したという一報を米TechCrunchが掲載した。拡大し続けているかのように見えたMaker Faireだったが、陰りの予兆はあった。
この一報の半月ほど前に開催されたMaker Faire BayAreaにおいて、同イベントの開催が2019年で終わる見込みで、その理由がスポンサー収入の減少であることが現地メディアにより報じられたのだ。事実、その年のMaker Faire BayAreaにはスポンサーの常連だったAutodeskやMicrosoftの名前はなかった。
出展者の大半が個人であるMaker Faireは物販を行う出展者やスポンサー企業を除き、基本的には出展料は無料だ。広大な会場費や人件費の大半はスポンサー収入によって賄われている。先のTechCrunchに掲載された記事でのデイル氏の発言によれば、経営は常に綱渡りの状態で、ベンチャーキャピタル(VC)から1000万ドル(約10億円)を創業時に調達したが、有効な収益手段を見いだせなかったという。
イベントの規模が拡大し、世界各地に広がったとしても、ビジネスとしての成長性や収益の大幅な増加が見込めなければ、追加投資を受けるのは難しい。
Maker Mediaは、2019年7月にMake Community LLCとして再出発し、メンバーシップを募って雑誌の復刊と米国でのMaker Faire再開を目指している。
こうした米国での一報を受け、日本でMaker Faireを運営するオライリー・ジャパンも2019年8月のMaker Faire Tokyoで、「Maker Faireを持続可能にするには?」というトークセッションの場を設け、Maker Faire Tokyoの現状や持続的な運営を維持するための課題が語られた。また、同年11月には「MiniMakerCon」と題し、Maker Faireを含めたMakerコミュニティのあり方を議論するカンファレンスも開催された。
両イベントで語られた情報をまとめると、Maker Faire Tokyoも収支としてはスポンサー収入に大きく依存している。その一方で、会場(近年は東京ビッグサイト)の使用料や人件費などの運営費は規模の拡大に併せて収支を逼迫(ひっぱく)させる要因になっているという。
これまで無料だった個人の出展者からも出展料を徴収するなど、Maker Faireの持続可能性を維持するための施策も考えられる。しかし、収支バランスばかりに目を向けると、ビジネスとしての成功に偏った内容となり、これまで築いてきた文化にマイナスの影響を及ぼす可能性もある。日本に限らず、世界各国のMaker Faireでカルチャーとビジネスを両立させるための取り組みが問われている。
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