「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2020年04月03日 10時00分 公開

トヨタNTTの“がっかり”提携会見、その背後にある真の狙いとはモビリティサービス(3/4 ページ)

[桃田健史,MONOist]

MaaSデータプラットフォームの議論

 どうして、こうしたことを推測するかというと、筆者は現在、福井県永平寺町エボルーション大使という立場にあり、国や県と、CASEやMaaSに関するさまざまな座組みにおいて意見交換している。また、永平寺町MaaS会議の取りまとめ役として交通、物流、福祉、観光などに携わる企業や行政機関との間で意見調整を定常的に行っている。こうした各所の議論の中で、MaaSデータプラットフォームが登場するのだ。

 永平寺町エボルーション大使としては、各方面との紳士協定におけるコンフィデンシャル事案であると筆者自身が認識しているため、本稿においては、政府が既に公表している資料を踏まえた“一般論”として、MaaSデータプラットフォーム構築の実情について紹介したい。

 まずは、以下の公開情報を共有しておきたい。永平寺町では、経済産業省の支援事業も活用し、トヨタ本社と福井県内のトヨタ関連各社および日本郵便が協力する、デマンド型の自家用有償運送事業「近助タクシー」の試走運行を2019年11月1日から開始した。また、総務省の支援事業として2020年2月末、NTTドコモによる5Gを活用した除雪に関する実証試験を行っている。

2019年11月から試走運行を開始した「近助タクシー」 2019年11月から試走運行を開始した「近助タクシー」(クリックで拡大) 出典:福井県永平寺町

 それでは、順を追って説明する。

 霞ヶ関方面で、MaaSに関する基礎的な議論が始まったのは2016年に入ってからのことだ。当初は、日本の産業力強化が議論の中心だった。背景にあったのが、UberやLyftなどライドシェアリングなどシェアリングエコノミーの台頭が自動車産業界で大きな話題になっていたからだ。同時に議論が進んだのが、地方部の公共交通の在り方についてだった。

 こうした議論を経て、2018年10月には、経済産業省による有識者会議「IoTやAIが可能とする新しいモビリティサービスに関する研究会」で中間整理を公表した。この中で、「デジタル投資促進とデータ連携・利活用拡大のための基盤整備」が提唱され、データのオープン化・標準化が明記された。

 この中間整理を基に2018年度末、政府はスマートモビリティチャレンジ協議会を設立。2019年度に、経済産業省「スマートモビリティチャレンジ」と国土交通省「新モビリティサービス推進事業」として、永平寺町を含む北海道から沖縄まで全国28カ所でMaaS社会実証を実施した。

 2019年度は全国各地で地域シンポジウムが開催され、筆者は地方自治体や民間企業関係者と意見交換してきたが、「MaaS=マルチモーダル化に対応するスマホによるサービス」といった認識が目立つ。その中で「APIの共通化が課題」「〇〇プラットフォームが必要」という声が多かった。プラットフォームについて、どのレイヤーで、どういった領域までを含めるのかといった具体的な議論がないまま、各地でバラバラとスマホサービス化の議論が進んでしまった印象がある。

 こうした「〇〇プラットフォーム」ついては、国土交通省総合政策局が2020年3月19日「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」を公開した※)

※)関連リンク:国土交通省:「MaaS関連データの連携に関するガイドラインver.1.0」を策定しました!〜MaaSにおける円滑なデータ連携を後押しします〜

 この中で、「MaaSにおけるデータ連携の方向性」について以下の記述がある。

MaaSプラットフォームのあり方については、例えば全国的に統一的なプラットフォームの整備・運営等、様々なものが考えられるが、既に民間事業者等による MaaSプラットフォームの構築が進み始めていることや地域毎の課題に対応した創意工夫のある取組を促進するためにも、既存又は今後構築されるMaaSプラットフォームがAPI等で連携されることが一つのあり方と考えられる。(本文ママ)

 データプラットフォームの構成層について、戦略・政策層、ルール層、組織層、ビジネス層、機能層、データ層、データ連携層、アセット層といった区分も提示した。

 この「民間事業者等によるMaaSプラットフォーム」こそ、トヨタとNTTが構築を目指すものではないか。

 また、トヨタ・NTT主導による具体的なMaaSプラットフォームができることで、MaaS実証試験を行う地方自治体のMaaS社会実装を具体化しやすくなるはずだ。

 トヨタ・NTT共同記者会見は、このガイドライン発表の5日後だった。

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