IoTやAIの活用による理想像として描かれた「デジタルツイン」の世界が2020年はいよいよ現実化しそうだ。あらゆる情報を収集した“完璧なデジタルツイン”の構築は難しいが、用途を限定した“限られたデジタルツイン”の構築が進みつつある。2020年はこれらを組み合わせた“デジタルツインのアセンブリー”などへと進む見込みだ。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの普及が進む中、理想の姿として描かれるのが「デジタルツイン(デジタルの双子)」である(※)。
(※)関連記事:いまさら聞けない「デジタルツイン」
デジタルツインは、フィジカル空間の情報をIoTなどを活用して、ほぼリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内にフィジカル空間の環境を再現するというものである。フィジカル空間の一部を切り取り、データ上ではサイバー空間上に完全に一致するモデルを構築できることから「双子(ツイン)」と表現されている。
デジタルツインが構築できれば、物理世界をリアルタイムに遠隔地でモニタリングできるだけではなく、デジタルツインを活用してシミュレーションを行うことで“未来を予測する”ことが可能になる。こうした「現実世界と一致するデジタル箱庭」を構築することで、現実世界で発生しているさまざまな試作や試行、すり合わせなどのプロセス負担を一気になくすことが期待されている。
こうした動きはもともと設計領域で注目を集め始めた。設計領域ではCADによる3Dモデルデータを多数保有することになるため、これらを管理するPDM(Product Data Management)システムなどを活用してきた。これらを発展させ、製品ライフサイクル全てをカバーする形で、設計データを活用しようという発想からPLM(Product Lifecycle Management)システムなどの普及が進んだ。この概念をさらに広げ、製造業内での製品ライフサイクルから、出荷後の製品ライフサイクルまでを広げることで、「デジタルツイン」を実現できるという考え方である。
IoTにより製品の使用状況などの情報が、常にデジタルツインとしてサイバー空間のモデルと同時に再現される環境になれば、どのように使われているのかというのが把握でき、データとして蓄積できるようになる。これにより具体的な使用状況に基づいた設計品質における改善サイクルを回すことなどが利点として考えられていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.