受け売りばかりで悪いけど、モデルって使おうと思えば何にでも使えるらしいよ。
サプライヤーの考えとか価値観にもよるけど、例えば、EV(電気自動車)の暖房効率を上げようとすると、熱マネジメントとかヒーターの使い方とかいろいろアプローチがある。ガラスのサプライヤーが暖房効率に貢献したいと思えば、モデルがあればガラスをどうすればいいか検討しやすくなるし、自動車メーカーにも客観的に提案できるだろう。
でも、どうして今なんだろう。自動車メーカーは昔からずっとモデルベース開発やってきましたよね。ウチだってシミュレーションやCAEならやってきてます。どうして今になってウチに言うんでしょうかね。
真意はその自動車メーカーの人に聞くのが一番だけど、モデルベース開発は複数の関係者の間でやりとりしたい段階なんだと思う。自動車メーカーとサプライヤー、企業と大学みたいにね。車両1台をモデル化するなら、自動車メーカーの中でも違う部署同士でモデルをやりとりしないとならない。その一員になってほしいんだと思うよ。
そのモデルのやりとりの輪に入れないとまずいですかね?
モデルのやりとりや流通は始まったばかりだから、八木崎の会社が特別遅れていてまずいということはないかもしれないね。これはあくまで想像だけど、将来的に、モデルのやりとりでの開発がメインになったら、この要望に応えてくれる会社は取引上とても有利になるかもしれない。
もしそうなってくるとすると、確かにこのままじゃまずい……。
自動運転車なんかは、型式認証でもシミュレーションを使う可能性があると聞いているから、部品とモデルをそろって納入することもあるかもしれない。想像だけどね。
でも、モデルのやりとりは、経済産業省と大手の自動車メーカーやサプライヤーが何年にもわたって取り組んできたものだ。経産省の研究会が2017年度にとりまとめた「SURIAWASE 2.0」※)ってきいたことはあるかな? 自動車業界全体でやろうとしていることで、五本木工業だけが頼まれていることではないんだ。
※)関連記事:自動車業界全体でのモデルベース開発活用へ、「SURIAWASE2.0」を産官学で深化
なるほど。武里さんが言おうとすることがおぼろげながら分かってきました! あっ、電車の時間だ! また相談に乗ってくださいね!
八木崎は武里の解説を聞くうちに、生来の前向きさを取り戻しつつあった。後日、改めてモデルベース開発やモデルのやりとりについて相談にのってもらうことを約束し、2人は解散した。
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