製造業がサブスクリプションに踏み出す上で理解すべき3つのポイントサブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(3)(2/3 ページ)

» 2019年12月25日 11時00分 公開

2.サブスクリプションは分割払いやリース契約と同じではない

 売り切り型ビジネスの考え方が抜けきらず、サブスクリプションを分割払いやリース契約などと同じようなものだと誤解するなど、間違った認識を持っている場合も多い。従来のような無償で提供されるソフトウェアや、売り切り型といったプロダクト販売型のソフトウェアビジネスと、サブスクリプションなどサービス型のソフトウェアビジネスは明らかにビジネスの性質が異なっている。

 プロダクト販売型のビジネスと、サブスクリプションなどのサービスビジネスは価値提案が異なることについて理解する必要がある。

 サブスクリプションなどで提供されるサービスビジネスは、ソフトウェアを通して得られる“顧客体験”を価値として対価を支払うことになる。時間とともに変化し続ける顧客のニーズを捉えながら、長く利用し続けてもらうために顧客満足度を追求することに主眼を置いている。常に進化し続けるソフトウェアサービスから価値を体験しながら、顧客は自らのビジネスを成長させる機会を得ることができる。

 そこで、顧客体験を価値として提供し、収益ストリームを創造するポイントは大まかに分けて2つある。1つは新規顧客の獲得、もう1つは既存顧客の契約継続とクロスセルやアップセルだ。

イメージ ※図はイメージです

 新規の見込み客の開拓には、製品を体験してもらうことによって新たな顧客接点を得る必要がある。トライアルサービスでソフトウェアが一定期間無料で利用できるプランを提供できれば、新たな見込み客との顧客接点を獲得することが可能になる。一定期間経過後にそのまま有料プランへ移行したり、有料のサブスクリプション契約へ更新を促したりするアプローチが行えるようになる。

 本契約が行われず継続利用されない場合は、ソフトウェアの機能の一部や全ての利用を停止させるなど、制御を施せるのがトライアルの特徴だ。さらにソフトウェアの利用状況をクラウドに収集してトライアル中の顧客の動向を把握できれば、営業部門は契約締結に向けた対応をスピーディーに実施できる。これらは全て、ライセンス契約をデジタル化したことによって得られる恩恵だ。

 そして、サブスクリプションの契約を締結した後、製品を長く利用し続けてもらうために、市場の動向や顧客のニーズを的確に把握して、クロスセルやアップセルを実現させるビジネスフェーズに移行する。新たに開発した機能を有料オプションとして提案することでアップセルを実現でき、新しい製品ラインアップもそろえればクロスセルにつなげられる。顧客の動向を把握しながらサービスを拡充し、新しい機能やプランを提案し続けることが重要になってくる。

 解約など顧客離れの対策も、安定的な収益ストリームの確保には欠かせないポイントだ。オーバースペックなプランを利用している顧客の場合、利用頻度や普段使用している機能数が減少するような傾向があり、いつかは契約を途中解約されることが想定される。顧客の利用状況を把握しながら新しいプランを提案し、即時にリリースすることによって契約をつなぎとめる活動が展開できる。

 顧客一人一人のニーズに応じた、柔軟でスピーディーかつ、パーソナライズされた提案は、デジタル技術を駆使することで初めて可能にし、安定かつ定期的に収益を生み出す顧客基盤の確保を可能にする。

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