2019年の電子情報産業は過去最高の生産額、5G時代の日本はどう戦うか製造マネジメントニュース

電子情報技術産業協会(JEITA)は2019年12月18日、電子情報産業の世界生産見通しと5G(第5世代移動通信)の世界需要額見通しを発表した。

» 2019年12月19日 06時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 電子情報技術産業協会(JEITA)は2019年12月18日、電子情報産業の世界生産見通しと5G(第5世代移動通信)の世界需要額見通しを発表した。2019年の世界生産額は対前年で微増となるも過去最高を更新。2020年も成長が継続し3兆米ドル超えとなる見通しだ。5G市場の世界需要額は年平均63.7%と飛躍的な成長を見込んでおり、2030年には約168兆円規模に達する見込みだ。

 同協会では会員企業へのアンケート調査などをベースに、2007年から毎年世界および国内の電子情報産業の生産規模を推計している。

2019年は世界経済の先行き不透明感に翻弄されるも成長を維持、

 電子情報産業の2019年世界生産額は、前年比1%増となる2兆9219億米ドルを見込む。企業におけるデータ利活用の高度化に伴い、ソリューションサービスが好調だった。一方で、投資抑制などにより電子部品は在庫調整局面を迎え、半導体はメモリ価格低下のあおりを受けたことから、世界生産額は微増にとどまる見込みとなった。

 2020年の世界生産額は3兆807億ドルと過去最高を更新する見通し。世界各国で5Gの展開が進むことや、攻めのIT投資のさらなる浸透がプラス要因に働く。品目別では、電子部品と半導体が伸長する他、ソリューションサービスが2019年、2020年ともに過去最高の世界生産額を更新するとみられる。

電子情報産業の世界生産額推移(クリックで拡大) 出典:電子情報技術産業協会

 海外生産を含む日系企業の世界生産額は37兆3669億円で、前年割れの見込み。企業の生産性向上などを背景としたパソコンやパブリックディスプレイ、ソリューションサービス等の国内需要が押し上げ要因となるが、経済先行き不透明感に伴う投資抑制などで半導体と電子部品が対前年を大きく下回った。電子工業の国内生産額は11兆76億円で、こちらも前年実績から微減するとみられる。

 今後はIoT機器やソリューションサービスの需要拡大が期待できる他、5G関連投資の拡大によって、2020年の日系企業の世界生産額は前年比2%増の38兆1065億円で、プラス成長に転ずる見通し。電子工業の国内生産額は前年比ほぼ横ばいの11兆488億円を見込んでいる。

日系企業の世界生産見通し(クリックで拡大) 出典:電子情報技術産業協会
JEITAの遠藤信博氏

 CPS(サイバーフィジカルシステム)/IoT(モノのインターネット)の世界市場についても推計を行っており、2018年の同市場は241.1兆円規模だった。2030年には532.1兆円と大幅な成長を予測する。JEITAは2017年にも同調査を行っているが、当時調査では2030年の市場規模を404.4兆円と見込んでいた。会見に出席したJEITA会長の遠藤信博氏は「CPS/IoTの世界市場は大きく拡大している。2030年を前回調査と(今回調査で)比べると、127.7兆円さらに大きくなる。CPS/IoT市場は大きなポテンシャルを秘めている」と説明した。

飛躍的な成長が予測される5G、当初の成長エンジンはローカル5Gに

 5G市場の世界需要額は年平均63.7%増で成長し、2030年には168.3兆円に達する見通し。2018年の需要規模から約300倍に拡大するという。品目別では、IoT機器は自動運転車やロボット、ネットワークカメラなどが需要を牽引する一方、ソリューションサービスにおいては製造、金融、流通・物流などが需要を牽引するとしている。遠藤氏は「Society 5.0の実現に向けて5Gはキードライバーになる」と期待を示した。

5G市場の世界需要額見通し(クリックで拡大) 出典:電子情報技術産業協会

 また、新たな市場を創出すると有望視されているのが「ローカル5G」だ。クローズドな領域でプライベートかつ安定した高速ネットワークを利用できるため、これまで無線化が進んでいなかった工場や農場、建設現場やイベント会場、病院などで導入が進むと見込まれている。JEITAはローカル5G市場の世界需要額が年平均65.0%で成長し、2030年には10.8兆円に拡大するとみる。日本では2030年に1.3兆円の需要額となる見通しだ。品目別では、ロボットやドローン、自動運転車が需要を牽引し、ソリューションサービスでは製造分野向けが伸張すると予測している。

ローカル5G市場の世界と日本の需要額見通し(クリックで拡大) 出典:電子情報技術産業協会

 遠藤氏は、5G時代における日本の競争力確保について「日本の強みであるITとOTをソフトウェアで組み合わせ、付加価値の高いソリューションを提供するローカル5G市場を国内で早期に立ち上げ、海外市場へ示していくことが極めて重要」と指摘。その上で、2020年度の税制改正大綱に盛り込まれた5G投資促進税制について「日本のローカル5G市場の立ち上がり時期が前倒しされることを期待している」と評価した。

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