スマート工場化や産業用IoTなどが盛り上がる中で大きな注目を集めるようになった通信規格が「OPC UA」です。本連載では「OPC UA」の最新技術動向についてお伝えします。第5回ではOPC UAアプリケーションの開発について解説します。
「OPC UAとは何か」について、先進技術動向を含めて紹介する本連載ですが、第2〜4回では「つなげる」「安全に」「伝える」という、OPC UAの3つの特徴において、機能やその仕様について紹介してきました。
本連載の一区切りとなる今回は「OPC UAアプリケーションをどのように開発するか」について紹介します。
OPC UAはオープンな国際標準規格ですので、仕様書を確認して、OPC UAの抽象インタフェースを具現化したソフトウェア層である通信スタックと、その上で動作するOPC UAアプリケーションの両方を独自に開発することが可能です(※1)。ただし、出来上がったOPC UAアプリケーションの品質担保も含めて、全てを独自開発するには、かなりのリソースが必要となります。
(※1)通信スタックとOPC UAアプリケーション間のAPIは規定されていません。意味としての仕様が満たされていれば、OPC UA仕様に準拠していると判断されます。
OPC Foundationは、OPC UAの普及、推進のために仕様の開発と維持を行う非営利団体で、OPC UAアプリケーションの開発を支援するためのさまざまな環境を提供しています。本稿では、OPC Foundationの会員になることで利用できるそれらの支援環境を中心に紹介し、最後に全体的なまとめをして連載の区切りとします。
OPC Foundationが提供している、OPC UAアプリケーションの開発支援環境を次に示します。
まずは、開発支援環境の「モノ」と「コト」の中から、OPC UAアプリケーションの開発を支援する「モノ」について紹介します。
OPC UAの仕様書とソフトウェアはOPC FoundationのWebサイトからダウンロードできます。ソフトウェアにはソースコードとライブラリが存在します。ソフトウェアの種類としては、先述の通信スタックやサンプルアプリケーションがありますが、どちらも評価用として使うことも、ビジネス目的で使用者側の責任で参照して利用することもできます。
注意点としては、ソースコードの種類やOPC Foundationに登録した会員種別によって、利用できるライセンス内容やIPポリシーが異なるので確認が必要だということがまず挙げられます。また、サンプルアプリケーションは、通信スタックの上位となるプラットフォーム非依存部分における共通的なOPC UA仕様の実装例としては参考になるものの、可読性に重きが置かれているためにセキュリティ脆弱性の観点では課題があることを認識する必要があるということなども注意すべき点です。
その他には、OPC UA仕様に準拠した製品の動作確認作業を支援するためのテストツール「Compliance Test Tool(CTT)」を会員種別に応じた手続きにより提供しており、クライアントとサーバの両方のテストが行えます。このツールを使っての事前の動作確認が次ページで紹介する品質保証イベントへの参加に必要とされます。
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