「ヒューマンセントリック スマートものづくり」とは「データをつなげて有効活用し、技術革新で生産性向上を行うとともに、人を『要』とするモノづくり」だという。富士通テレコムネットワークスでは、この「ヒューマンセントリック スマートものづくり」によって、目指す工場の姿として以下の3つのポイントを挙げる。
寺内氏は「一般的にいわれているようなスマート化は、AI活用による無人化など、人が働く意欲を減退させるような方向性での取り組みが多い。『ヒューマンセントリック スマートものづくり』はあくまでも人が中心で人のやりがいや働く意欲を高めるためのものだ」とその価値を訴えている。
富士通テレコムネットワークスでは、これらの取り組みを2016年から開始。最初は「どうやって見える化を実現するかということを目的に取り組みを開始した」(寺内氏)とする。取り組むに当たって、必要なものを「システム構築」「手法開発」「ハード領域」の3つに分け、システム構築では工場の情報と、ERPやMESなど上流のシステムと現場のシステムを結び付ける取り組みを進めたという。手法開発では数理解析を現場のメンバーで行えるようにし、それを基にさまざまな状況に合う手法の開発を進めていった。2018年にはこれらの3つの領域を1つにまとめ「スマート化」につなげていったという。寺内氏は「2019年はさらに工場内だけではなくサプライチェーン領域に広げていくことを検討している他、人作業領域の改善に向けた取り組みを進めている」と述べている。
先述した通り、富士通テレコムネットワークスでは、工場内のさまざまな機器や人の作業からデータを吸い上げ、それらを一元的に活用できるようにしたサイバーフィジカルシステム(CPS)の構築が進められている点が特徴である。
約150項目の生産データが見られるようになっており、それを富士通の「インテリジェントダッシュボード」で一元的に可視化している。生産数などの生産情報や品質情報、エネルギー管理などができる他、異常のあるポイントなどについてはドリルダウンで詳細まで情報を掘り下げることなどが可能だ。品質検査の画像情報なども記録されているために、歩留まりの問題などが起きた際にはその場で要因を探ることも行える。
CPSを目指したとしても多くの工場ではデータ収集のところで断念するケースも多い。富士通エレコムネットワークスでは、富士通製のIoT関連製品や汎用品なども組み合わせながら低価格で上手にデータ収集を行っていることが特徴だ。「成果が確定したわけではない中で大きな投資は難しいのが現実だ。あるものをうまく生かしながら投資を抑えて小さな取り組みを重ねてきた。ここまでの取り組みの総投資額でも数百万円レベルで抑えられている」と寺内氏は語る。
これらの取り組みにより工場全体で1秒当たり2.4MB、1日当たり85GBのデータをリアルタイムに収集。「現在何を製造しているのか」や「予定と異なるところはどこか」などを常時把握できるようになっているという。
寺内氏は「CPSは『実行力がある現場』と『人では困難な問題を最適化する仮想空間』を常に回し続ける機能だと考えている。現場からのデータをリアルタイムに収集し人をナビゲートするデータに変えてそのまま現場にフィードバックする他、AIや数学的手法を使い分析結果をタイムリーにフィードバックする。これらにより現場の活動を高めていく」と述べている。
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