WF01TRの開発では、どちらかというとアナログ的なアプローチによって、伊藤氏の感覚的な部分を数値化していったという。しかし、これでは杉原氏が示したパーソナライズの量産化の世界観は実現できない。そこで同社は、データ収集をオートメーション化することを検討。そして、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)に協力を仰ぎ開発したのが、最適なシーティングポジションの検討に役立つシミュレーター(SS01)だ。
SS01は、シートポジションやハンドリムを漕ぐ腕の力など、さまざまなパーソナライズデータを取得できるシステムで、fuRoが培ってきた3つのロボット技術により実現している。
「1つ目は、モータ制御によって最適なシートポジションを動的に変更できる点だ。背面シート、フットレストなど、合計15カ所の可動部を備えており、fuRoにとってみれば多関節ロボットといえる。2つ目は計測技術だ。ホイールの速度や力の加わり方の計測はトルク制御と同じであり、搭乗者の動的な重心の計測はロボットにおける重心制御と同じである。そして、3つ目がホイールの負荷制御。こちらもモーター制御そのものであり、ホイールの負荷を動的に変更することが可能だ」と、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 副所長の清水正晴氏は説明する。
ちなみに、fuRoはRDSから相談を受けて約2カ月間でSS01を開発したという。「われわれは、これまで培ってきたさまざまなロボット技術をコンポーネント化している。それらを組み合わせることで、スピーディーな開発を実現できた」(清水氏)。
また、杉原氏は「既に、SS01の活用は次の段階に進んでいる」とし、現在、国立障害者リハビリテーションセンター研究所とともに、多くの車いすユーザーを対象にパーソナルデータを計測、解析するプロジェクトがスタートしたことを明かした。
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