日本初となるユーザーイベント「Formlabs USER SUMMIT JAPAN 2019」に併せて来日したFormlabs 最高製品責任者のDavid Lakatos氏と、同社 最高マーケティング責任者のJeff Boehm氏に、同社を取り巻く環境や日本市場への期待、気になるあの製品の開発状況、そして金属3Dプリンタへの挑戦の可能性などについて聞いた。
Formlabsは2019年9月13日、東京都内で日本初となるユーザーイベント「Formlabs USER SUMMIT JAPAN 2019」を開催した。
MONOist編集部では、同イベントの開催に併せて来日した同社 最高製品責任者のDavid Lakatos(デビッド・ラカトス)氏と、同社 最高マーケティング責任者のJeff Boehm(ジェフ・ボヘーム)氏に話を聞く機会を得た。両名に、同社を取り巻く環境や日本市場への期待、気になるあの製品の開発状況、そして金属3Dプリンタへの挑戦の可能性などについて質問をぶつけてみた。
――「Form 2」の販売が約5万台に上り好調のようだが、3Dプリンタが市場に受け入れられるために必要な条件とは何か?
ラカトス氏 Formlabsの多くの顧客は、プロトタイプ(試作)、そして最終的なパーツ製造のためにわれわれの製品を活用している。いわゆるプロフェッショナル領域の方々だ。
その視点で言うと、プロ向けの3Dプリンタとして求められる重要な要素は、「クオリティー」「精度」「結果の予測可能性」の3つだと考えている。
3Dプリンタの弱点の1つに造形の失敗があるが、ここ数年、光造形(SLA)方式の3Dプリント技術を用いて、顧客が抱く期待値を大きく超えるものを世に送り出そうという努力を続けてきた。それはつまり、プリントの成功率を上げること、精度の高い造形を可能にすること、そして、同じものを造形した際に品質を均一に保つことだ。
業務の中で3Dプリンタを活用してもらうということは、使いたいときにうまく使えない、期待していたものができない……といったことではダメで、信頼できるパートナー、頼れるチームの一員として機能しなければならない。そういう体験を作り出せるかどうかが非常に重要となる。
――競合との差別化ポイント、Formlabsの優位性はどこか?
ラカトス氏 世の中にある3Dプリンタの中で、品質や精度の良いものを見てみると、数百万円〜1000万円以上の価格帯のものが多い。これに対し、Formlabsの3Dプリンタは安価であり、同じ価格帯の製品でわれわれと同等レベルのクオリティーを実現する製品はないと自負している。
――日本市場のどの領域で特に存在感を強めているのか? また、今後狙っていきたい領域はどこか?
ラカトス氏 まず、日本を代表する自動車分野については、設計部門に入りつつある状況だが、まだ数が多いとはいえない。検証を進めてもらっている段階といえる。
その一方で急速に伸びてきているのが、フィギュア製造の現場だ。個人で楽しむ、いわゆる趣味の領域ではなく、ビジネスとしてフィギュアを製造販売している領域だ。先日事例発表をしたが、海洋堂が展開するガレージキット「DGK(デジタルガレージキット)シリーズ」の量産にForm 2が複数台採用されている。3Dプリンタで最終製品を量産する事例として、日本らしいユニークなものといえる。
将来という視点では、欧米で成功している歯科(デンタル)市場での展開が期待できる。歯科市場は現在、Formlabsの強みが最も生かされている領域の1つといえる。この領域では、非常に高い造形精度が求められると同時に、装置を安価に導入したいというニーズにも応えなければならない。Formlabsであればそれが実現できる。
ただし、法規制の問題もあるため、限定的な普及にとどまっているのが現状だ。今後、日本でも規制緩和が進めばFormlabsの存在感はさらに強まるだろう。だが、単に規制緩和を待っていては遅いので、われわれとしては、現在ある規制に準拠していく方向で材料開発に努めていく考えだ。
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