テックスタッフが支援するのは、スタートアップだけではない。現代美術家のAKI INOMATA氏も作品づくりにDMM.make AKIBAを活用している。
INOMATA氏は、デジタルファブリケーションを駆使した作品を制作するアーティストで、DMM.make AKIBAのスカラシップ制度を利用して、作品の制作の一部をStudioで行っている。
3Dプリンタや電子機器、ロボティクスなどハードウェアを活用するアーティストの課題は開発、製造環境の確保だ。機材を単に使用するだけでなく、エンジニアリングの面でサポートできる人的リソースを、限られた時間や予算の中で、いかに確保するかが重要だ。
INOMATA氏は、生き物とテクノロジーを組み合わせた作品を制作している。代表的な作品の1つである「やどかりに『やど』をわたしてみる」は、光造形方式の3Dプリンタで制作した透明な「やど」を用意し、ヤドカリに引っ越してもらうというプロジェクトだ(関連記事:パーソナル工作機械によるクリエイティブアワード、グランプリは3Dプリンタ製のヤドカリお宿)。
DMM.make AKIBAでは機材選定やデータ作成のサポートだけでなく、ヤドカリが入っても問題がないよう造形物の洗浄処理などを行った。また、作品そのものの制作だけでなく、海外の展示会に出展するための梱包(こんぽう)についても、箱の作成方法や専門業者を紹介するなどのサポートを行ったという。
「アート作品は大きくて繊細なものが多く、梱包や輸送はアーティストにとって悩ましい問題の1つです。特に海外に出す場合は、輸送中の衝撃や展示会場で現地スタッフが梱包する際に作品が破損することが日常茶飯事にあります。私たちはスタートアップの製品開発でノウハウがあるので、異分野でも相談を受けられるのが強みになっていると思います」(山口氏)
INOMATA氏は日本の美術館では初の個展を2019年9月に十和田市現代美術館(青森県)で開催する。今後の活躍が期待されるアーティストの舞台裏を、モノづくりのプロフェッショナルたちが支えている。
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