「船の自動運転」と聞いて何を想像するだろうか。クルマの自動運転よりも簡単とは言いきれない。目視による見張り、経験と勘に基づく離着岸時の操作……これらをどう自動化するか。自動航行船の実現に向けた開発動向を紹介する。
自動車に比べると少ないが、それでも最近、船舶事故が報道される機会が増えている。記憶に新しいのは、商船三井客船に所属する「にっぽん丸」が2018年末にグアム港で起こした離岸中における接触事故だろう。それ以外にも「砂浜に乗り上げた」「岩場に乗り上げた」「岸壁に衝突した」という事故は、広く知られていないだけで日本だけで毎年500件前後発生している(運輸安全委員会「船舶事故の統計」より)。【訂正あり】
船舶の場合、その船体の大きさ、そして、積載している貨物や燃料の量が多大なことから、事故が発生した場合の港湾施設、航路、そして、環境に与える影響は深刻になる。また、船員の高齢化も進んでおり、全国内航タンカー海運組合の2017年調査では平均年齢は下がっているが、年齢構成別で多いのは60〜66歳、次いで55〜60歳となっている。さらに人員不足による船員の疲弊も影響し、「当直中(※)に居眠りして」という事例も発生している。
(※)船橋にあって航行指揮を執る状態。航海士が交代で担当する。
このような状況から、船舶航行における安全性の向上と省力化を図るため、国土交通省主導で自動航行船プロジェクトを進めている。2017年に閣議決定されたロードマップでは2025年の実用化を目指している。現在、自動航行船プロジェクトは「自動操船機能」「遠隔操船機能」「自動離着桟機能」のそれぞれで、2018年7月に複数の企業が実施者として指定を受けて、実証事業を進めている段階だ。
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