発表の2つ目のポイントは、新たなパートナーの参加である。HAKUTO-Rには2019年2月に日本航空、三井住友海上保険、日本特殊陶業が、パートナーとして参加することを表明していたが、新たにシチズン時計、スズキ、住友商事が参加した。パートナーの代表者は「HAKUTO-R」への参加の意義について以下のように語っている。
日本航空では2015年から日本の民間宇宙探査チーム「HAKUTO」に共感しサポートを開始。2017年にはispaceと資本業務提携を行うなど、継続的な支援を続けている。
具体化した取り組みとして、航空機の整備や輸送の技術を生かしてランダー開発の支援を行う。成田空港のエンジン整備センターの一部にispace用のスペースを用意する計画なども示した。
日本航空 常務執行役員 西畑智博氏は「日本航空は空の移動を担う役割を果たしているがエアモビリティとしてさまざまな領域に役割が広がっている。このエアモビリティの最終的な到達点が宇宙だと考えている。ベンチャースピリットを持って日本の宇宙への取り組みを支えていく」と語っている。
三井住友海上火災保険は、リスク分析とリスク管理のプロとして、保険の面で宇宙開拓を支援していく方針を示している。
三井住友海上火災保険 常務執行役員 東京企業第二本部長 能城功氏は損害保険の起源が大航海時代の海難事故の補償だったことに触れ「宇宙開拓を第2の大航海時代だと捉えている。その中で月までの38万kmの航路におけるリスクを分析し、今回『月保険』として設計した。そして、その内容をispaceと合意することができた。世界初の月保険を通じて夢と可能性に満ちた挑戦を支援していきたい」と語っている。
日本特殊陶業は、全固体電池の実現に向けて、同プログラムに参加したという。
「月面での使用を考えると放射線や温度、振動など厳しい環境に耐える必要がある。今回こうした環境に耐えられる全固体電池の基本設計を完了した。今後、この基本設計に基づく詳細設計や製造方式の検討に入っていく」と日本特殊陶業 取締役 上席執行役員 技術開発本部長 小島多喜男氏は語っている。
さらに、これらの開発で得られた成果を水平展開し「2020年代前半には厳しい環境でも耐えられる全固体電池の販売を目指す」(小島氏)としている。
シチズン時計は時計の外装技術をベースとしたチタンの活用という面でHAKUTO-Rに参加する。
チタンは軽量で強度が高いという特性を持つが、加工が難しいという課題を持つ。シチズン時計では時計外装でチタンを活用した実績やノウハウを生かし加工技術や表面処理技術を組み合わせた「スーパーチタニウム」を確立している。このスーパーチタニウムをランダーやローバーに活用することを目指していく。
シチズン時計 常務取締役 営業統括本部長 竹内則夫氏は「シチズン時計がチタンを活用した時計を開発してから約50年となる。チタンでHAKUTO-Rを後押ししたい」と語る。
スズキはHAKUTOから参加してきたがHAKUTO-Rにもあらためて参加を表明した。
スズキ 四輪技術本部長 常務役員 生熊昌広氏は「スズキは従来、陸上や海上での生活の移動手段を提供してきた。その中で限られた大きさの中で最良の機能を最軽量で実現するためのノウハウや技術力を蓄積してきた」と語る。
これらの強みを生かし、具体的にはランダーのボディーや脚部の開発に関わっていくという。「衝突安全技術や軽量化技術、衝撃吸収の構造設計や解析などに取り組んでいく。スズキにとって空は未知の領域だが、だからこそ参加する技術者もワクワクして取り組んでいる」と生熊氏は述べている。
住友商事は以前から政府主導の宇宙開発にさまざまな方面でかかわってきたが、民間主導の宇宙開発を積極推進するためにHAKUTO-Rへの参加を決めたという。
住友商事 執行役員 リース・船舶・航空宇宙事業本部長の石田英二氏は「月を生活圏とし月にさまざまな産業を興す取り組みに協賛する」と狙いについて語る。
具体的な取り組みとしては、2019年4月に設立したオープンイノベーションラボ「MIRAI LAB PALETTE」などを活用し、多様なパートナーとのネットワーク化を実現し価値創出につなげていく。「商社ならではの宇宙開発への貢献をしていく」と石田氏は語っている。
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