　産業用IoTでは、エッジデバイスからの情報をネットワークサービスにより収集し、さまざまなアプリケーションによってデータを活用することで価値を生む。このサイクルを実現するためには、一元的なデータ活用の仕組みが必要となる。ただ、IoTデバイスなどから、データを収集するクラウド基盤、業種ごとのアプリケーションなどの全ての要素を自社内に抱える企業は存在しない。そこで、これらの一部を担う企業同士で協力し、パートナーシップを組んでソリューションを構築することが重要になる。これらを背景に、アドバンテックが白羽の矢を立てたのがIIJである。

　産業用コンピュータで世界トップシェア（IHS Markit調査）を持つアドバンテックはさまざまなエッジデバイスをグローバルで展開していることに加え、2016年からは産業用途に特化したIoTプラットフォーム「WISE-PaaS」を展開している^（※）。

　WISE-PaaSは、工作機械などの生産設備や製造ラインに設置された同社の産業用コンピュータやデバイスからさまざまなデータをリアルタイムに収集し、設備やラインの状況を可視化することで、設備およびラインの稼働率把握や設備のリモート監視、予兆保全などを可能にするためのプラットフォームである。製造業を中心に、物流、運輸、交通、エネルギーなどの業種で、業務効率を向上させるIoT構築に必要なシステム基盤を一元的に提供可能としている。

　ただ、アドバンテックではこれらの要素を結ぶネットワークサービスとクラウド環境は保有していない。「日本でもスマート工場化に向けて提案を進める中で、ユーザーの既存のネットワーク網に入らずにネットワークを構築する点、現場で配線をしないという点が課題となっていた。解決するにはSIMを活用するしかないがどうするかで悩んでいた」とアドバンテック（日本法人）インダストリアルIoTグループ iFactory事業部ディレクター古澤隆秋氏は語っている。

　一方で、IIJはフルMVNO（仮想移動体通信事業者）ならではの特性を生かした閉域モバイルネットワークやユーザー専有型クラウド環境への閉域接続など、IoT用途向けにセキュアなネットワークとクラウドサービスを提供している。「モバイル契約数は法人契約が飛躍的に拡大しているがその内6割以上がIoT用途である。IoTの案件数で見ても2016年から2倍以上のペースで年々拡大している」（IIJ 常務執行役員立久井正和氏）。ただ、産業に特化したノウハウやエッジデバイスなどについてのノウハウはない。

ワンストップのIIoTソリューションを展開

　そこで、両社が足りない部分を補い合う形で協業を進めることを決めたという。両社はWISE-PaaSの日本リージョンを共同で立ち上げ、日本市場向けの新たなサービス「WISE-PaaS JP（仮称）」を開発する。それぞれが強みを持つ技術とサービスを相互に補完することで、アプリケーションから、ハードウェア、クラウド、ネットワーク、セキュリティまでをワンストップで提供できるソリューションとしてWISE-PaaS JPを展開する。