今回は連載の最終回として、新たな時代の中でイノベーションを実現するのに最も重要な“問題解決力”について取り上げます。
⇒連載「IoTのイノベーションは問題解決から」バックナンバー
前回、サービスや製品は“専用・単独”から“共用・共同”へパラダイムシフトしていることについて触れました。例として、自動車は乗っている人やモノを目的地に送り届けるための手段でしたが、今ではセンサーを搭載し、得た情報は渋滞状況の把握、安全な運転技術の確立のためにも使用されていることをお話ししました。
この“共用・共同”のトレンドは、テクノロジーや情報に限らず、資金や人財などのリソースに関しても同じことが起こっています。シェアリングエコノミーというワードをよく耳にするかと思いますが、このおかげで、問題解決力さえあれば、企業に属している方も個人でビジネスをしている方にも平等にブルーオーシャンに参入できる可能性が生まれました。
仮に、あなたはフリーランスで何か良いアイデアを持っているとしましょう。そのアイデアを実現するために、あなたはSNSを使って簡単に仲間を募ることもできれば、クラウドソーシングで作業を依頼することもでき、クラウドファンディングで資金を調達することもできます。また集まった仲間のロケーションが異なっていても、SNSや安価で高速なテレビ会議システムを用いてコミュニケーションをとることも可能で、販売もインターネットで行えます。
新ビジネスの立ち上げは、あなた一人で全てのリソースや能力を持たなくても良いのです。だからこそ、いかに早く新しいアイデアを見つけ、実現するかが非常に重要です。そして、アイデアを偶然の思い付きにしない方法というのが“問題解決力”です。
イメージがわかないという方もいるかと思いますが、先ほどの例をさらに具体化させてみます。これまでの連載で例題として使用してきた「個別の状況に合わせた天気予報ができるサービス」の実現方法を思い付いたとしましょう。まずはSNS上で「5分後の天気が確実に分かるサービス」のアイデアを発信。興味を持ったエンジニアたち、営業や広報の経験がある人たちも集まりました。クラウドファンディングでは「出資者には5分後の天気が確実に分かるサービスを月100円で提供します」として資金を募りました。その結果、急な天気の変化に悩まされていた1000人から1人当たり1000円、合計100万円が集まり、その資金を用いてクラウドソーシングも活用してサービスを作り、営業活動と広報活動も行いました。サービス開始とともに出資してくれた1000人から月100円、合計10万円の売上に。ユーザーの口コミで半年後には1万人のユーザーが生まれ、年間1200万円の売上を出すビジネスになりました。
……いかがでしょうか。意外とあり得ない話でもないと思います。
世の中の不便を見つけ、その解決策を考えるのも問題解決ですし、実現に障害があればそれを取り除くのも問題解決です。そして本連載のタイトルにもありますように、問題が明確になっていてその最適なソリューションとしてIoTの導入やIoTの新サービスが誕生し、効果が最大限に発揮されることでイノベーションを起こせるのです。
最後に、問題解決は才能に依存するものではなく、その気があれば誰でも身に付けることができる技術です。問題解決のプロセスもテクニックも確立されていますので、ぜひこの連載記事をきっかけとして問題解決に興味を持ち、今後の世の中で新しいものを生み出す人が現れることを願ってやみません。
(連載完)
2000年にVSNに入社。インフラエンジニアとしていくつものプロジェクトに参画。VSNの“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」の構想メンバーであり、一流コンサルタントより問題解決手法の教示を受け、多くの問題解決事案に携わる。派遣会社でありながら、担当した事案には、数億円規模の売り上げ向上につながった例も。
現在は、同社「経営イノベーション本部」にて今後の事業の根幹を担うVIをさらに加速させるべく、事業計画の立案や浸透・推進を行う。
株式会社VSN https://www.vsn.co.jp/
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