流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は流体解析の結果に大きな影響を与える要素として、“メッシュの細かさ”と“境界層”について取り上げる。
前回は「乱流モデル」について解説しました。乱流モデルの選び方一つで、解析結果が大きく変わるということをご理解いただけたかと思いますが、解析結果に影響を与えるのは、それだけではありません。
既に構造解析を行っている人であれば、「メッシュ」が解析に与える影響について、よくご存じだと思います。“メッシュの粒度”は、解析結果の精度に影響を与える大きな要因です。特異点においてメッシュが細かい場合は、果てしなく応力が高くなりますが、基本的に変位は本来あるべき数値に落ち着きます。また、応力の分布やその絶対値も同様に“メッシュの細かさ”に依存します。ただ、際限なくメッシュを細かくすればよいわけではなく、計算するPCのパワーもありますから、適当なバランスを取る必要があります。
流体解析についても基本的な考え方は一緒です。後ほど示しますが、メッシュの細かさと解析結果には大きな関係があります。流体解析ソフトの場合、構造解析とは違って構造格子系、非構造格子系があったり、ポリへドラルなどがあったりなど、メッシュの扱い方が多様ですが(どのソフトを使うのかで決まってきますが)、それらのどのメッシュでも基本的にメッシュの細かさが、解析結果の精度に大きな影響を及ぼすことに変わりはありません。
ちなみに、構造格子は直方体の格子が座標系に沿って配置されるため、メッシュが規則的であり、メッシュの生成が容易で、計算速度に有利であることは想像できるかと思います。一方で、特にボクセル系の構造格子の場合、形状の再現性はよろしくありません。もし、3D CGなどを触ったことのある人であれば、ボクセル系のソフトを想像していただければよろしいかと思います。
非構造格子は、四面体以上の任意の多面体が不規則に配置されます。この場合、メッシュの生成や計算速度に対してデメリットがありますが、形状の再現性は高いといえます。
商用ソフトではどうなのかというと、どちらもあります。基本的には自分が解析する対象にマッチしたソフトを利用することが大切です。
メッシュの細かさ以外にも、考慮すべき事項があります。例えば、メッシュのアスペクト比です。構造解析と同様にアスペクト比が大きくなればなるほど、計算の精度は悪くなっていきます。また、局所的にメッシュを細かくした場合、それ以外のもっと大きなメッシュの領域をつなぐ領域では、メッシュの大きさをよりスムーズに遷移させていくことが、解析結果の精度に影響を与えます。
こちらはポリへドラルメッシュ(任意の多面体メッシュ)の例ですが、最初に示すのは要素を比較的細かく切った例です(図1)。次に示す境界層も含めて、細かくメッシュが切れていることが分かります。
今度はわざとメッシュを粗くした例ですが、壁面付近の要素も含めて全体としてアスペクト比も大きく、良いメッシュではありません(図2)。
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