「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

モビリティ革命の推進力、日本の交通に変化をもたらす4つの先進的取り組み交通政策白書を読み解く(後編)(2/6 ページ)

» 2019年08月19日 06時00分 公開
[長島清香MONOist]

「日本版MaaS」の実現に向けて

 一方で、MaaS発祥の欧州などでは、交通サービスは公的主体により提供されているが、日本においては、多様な民間主体により多くのサービスが提供されており、民間セクターと公的セクターとが、大都市や地方都市などさまざまな地域の特性に応じた役割によりサービスを提供している。このため、MaaSについてもそれぞれの地域で多様なサービスの出現が期待されるとしている。

 さらに多くの民間交通事業者では、沿線のまちづくりや商業、観光など総合的なサービスを展開しており、移動と多様なサービスとの連携が可能だ。このような点が、欧州などとは異なる日本の交通分野の特徴であり、この特徴を積極的に活用した日本ならではのMaaSの展開が期待できるという。このような特徴のある日本においては、MaaSの相互連携などによる「ユニバーサルMaaS」を目指すべきとしており、併せて移動と多様なサービスの連携による高付加価値化や交通結節点の整備などまちづくりとの連携も、移動円滑化や外出機会の創出などの観点から重要であるとしている。

 交通政策白書2019では、このように「MaaS相互の連携によるユニバーサル化」と「移動の高付加価値化」が、望ましいまちづくりの実現に資する形で位置付けられた在り方を「日本版MaaS」と定義しており、その早期実現を目指して取り組むべきだと述べている。人々の外出や旅行など移動に対する抵抗感が低下することで移動や交流意欲が高まり、健康が増進され、まちや地域全体も活性化し、豊かな生活を実現することが、「日本版MaaS」が目指すところとしている。

 MaaSの推進に向けた取り組みについては、「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」の「中間とりまとめ」において、「地域横断的に取り組むべきもの」と「地域の特性に応じて取り組むべきもの」に分けて整理しており、特に「地域横断的に取り組むべきもの」として、MaaS相互連携、MaaSや交通事業者間のデータ連携の推進、運賃や料金の柔軟化、キャッシュレス化、まちづくりやインフラ整備との連携などを挙げている(図2)。

図2:日本版MaaS(クリックで拡大)出典:交通政策白書2019

MaaS実現の課題

 MaaSは、地域の交通が抱えるさまざまな課題を解決し、「あらゆる地域、あらゆる人にとって移動しやすい社会」を実現するために不可欠な要素となると想定されている。特に、民間の自由な発想に基づくイノベーションは、想定しないようなさまざまなサービスを生み出し、移動の利便性や効率性をさらに向上させる可能性があり、そのような取り組みが促進されるよう、環境整備を図ることが重要だとしている。

 他方、導入の仕方を誤ると安全性の欠如やデータ流出、混雑の激化など、問題の悪化や新たな問題の発生につながる可能性もあり、利便性や効率性の向上と安全性の確保、利用者の保護などとのバランスへの十分な配慮が必要であると指摘する。また、MaaSは技術革新などに伴い日々進化、多様化する可能性があるため、取り組みの不断の議論や検討が必要となる。そのため、国土交通省は、都市部と地方部を問わず全国各地の新たなモビリティサービスの実証実験を支援し、地域の交通課題解決に向けたモデル構築を推進するため、「新モビリティサービス推進事業」の公募を行っている。

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