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» 2019年08月16日 11時00分 公開

製造業にとっての「失われた30年」と、今後勝ち残るために考えるべき5つのことモノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

[長町基,MONOist]
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日本の製造業を取り巻く3つの変化の潮流

 日本の製造業を取り巻く環境の変化については「第4次産業革命の進展」「グローバル化の展開と保護主義の高まり」「ソーシャルビジネスの加速」という3つの潮流があるという。「これらが複合的に組み合わさってもたらす複雑な課題について対応していく必要がある」と井上氏は述べる。

 これらの日本の製造業が直面する危機をまとめると、以下の4つのポイントがあると井上氏は指摘する。

  1. 人材の量的不足に加え抜本変化に対応できていない恐れ(人材スキルの変化、デジタル人材不足、システム思考不足など)
  2. 従来「強み」と考えていたものが、変革の足かせになる恐れ(取引先の意向偏重、品質への過信など)
  3. 経済社会のデジタル化などの大変革期を経営者が認識できていない恐れ(ITブーム再来との誤解、好調な受注による慢心など)
  4. 非連続的な変革が必要であることを認識できていない恐れ(自前主義の限界、ボトムアップ経営の依存など)

 これらの課題の大きな要因が経営者の問題にあると井上氏は指摘し「日本企業の経営者はまだ危機感が足りないのではないか」と述べている(※)

(※)関連記事:「ものづくり白書」に見る、日本の製造業が持つべき4つの危機感

日本の製造業が勝ち残るために取るべき道

 これらの状況を踏まえて日本の製造業が世界で勝ち残っていくためには何が必要になるだろうか。井上氏は以下のようなポイントを挙げている。

  • 世界シェアの強み、良質なデータを生かしたニーズ特化型サービスの提供(顧客の新たなニーズに対応したサービス提供型ビジネスモデルの確立)
  • 第4次産業革命下の重要部材における世界シェアの獲得(部素材などの強みを生かし、完成品メーカーへの積極的な提案や技術の差を背景とした標準獲得などで世界市場を開拓、拡大)
  • 新たな時代において必要となるスキルを持つ人材の確保および組織作り(製造×AI・IoTスキルを持つ人材の育成と、スキルを持つ人材が活躍できる場作り)
  • 技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施(熟練技能のデジタル化を強力に推進。深刻な人手不足を追い風に変え、現場の徹底的な省力化を進めて生産性を向上)

 井上氏は「日本の製造業が持つ強みは存在し、それを生かす形で先進技術やビジネストレンドをどう取り入れていくかが重要だ」と語っている。

 これらの取り組みでは産官学や企業間などでの協業が必須となるが、オープンイノベーションについては「取り組み自体は増えつつあるが、海外に比べて広がりはまだ不十分である」と井上氏は認識を語る。産学連携についても「着実に進展しつつあるが、個別技術の橋渡しが中心で、大学の機能やリソースを十分に活用できていない」と考えを述べている。ベンチャー・エコシステム構築に向けては、ベンチャー投資額の伸びなど明るい材料は見られるが「ベンチャーが自律的に生まれ、育ち、リソースが還流するエコシステムの構築にはまだまだ至っていない」(井上氏)と指摘し、さらなる取り組みを強化する方針を示していた。

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