EtherCAT Technology Group(ETG)は2019年7月2日、第13回となる日本メンバーミーティングを開催し、産業用オープンネットワークである「EtherCAT」の最新技術動向などを紹介した。
EtherCAT Technology Group(ETG)は2019年7月2日、第13回となる日本メンバーミーティングを開催し、産業用オープンネットワークである「EtherCAT」の最新技術動向などを紹介した。
ETGは2018年末に5000社の加盟企業を達成するなどメンバーが順調に拡大。さらに、EtherCAT対応マスター製品の製品化を行った企業が220社、対応ドライブの製品化を行った企業が174社、対応I/Oの製品化を行った企業が121社、対応エンコーダーおよびアクチュエーターの製品化を行った企業が38社となるなど、順調にメンバーや製品群を拡充してきている。
ETGのエグゼクティブディレクターのマーティン・ロスタン(Martin Rostan)氏は「産業用ネットワークとして、世界一の座を争う立場となっている」と成長についての自信を見せる。
新たな技術として力を込めて紹介したのが「EtherCAT G」である。従来の「EtherCAT規格」が100Mbpsの通信速度だったのに対し、「EtherCAT G」は1Gbps、10Gbpsという高速、大容量通信に対応。高速性能以外の機能はEtherCATと同様でそれぞれを接続することも可能である。例えば、「EtherCAT G」規格を幹線ネットワークで使用し、スレーブに当たる部分では「EtherCAT」を分岐させて使う「ブランチコンセプト」に対応することも大きな特徴である。
「ブランチコンセプト」についてロスタン氏は「EtherCAT Gの幹線の傘下に100MbpsのEtherCATによる通信セグメントを設置することができる。既存のネットワークシステムを保持したまま幹線を入れ替えるだけで高速化が実現できる。既存のEtherCATでのシステムを全てEtherCAT Gに置き換えた場合、従来比7倍の高速化を実現できたが、幹線をEtherCAT Gに置き換え、その他のネットワークは既存のEtherCATのままという形でも従来比5倍の高速化を実現できた」と価値を訴える。
これらを実現できるのは、EtherCAT規格の後方互換性が確保されているからだ。「EtherCAT GはEtherCATの新たなバージョンではなく、置き換える存在でもない。従来の100Mbpsでも要件的に問題がないところであれば、そのままEtherCATを使用できる。広帯域が要求されるようなニーズがある場合にはEtherCAT Gが当てはまるが、これらを最適な場所で組み合わせて使うという姿が現実的なものとなるだろう」とロスタン氏は述べている。
EtherCAT Gが求められる用途としては「高速性やリアルタイム性よりも、広帯域やスループットを求めるケースが想定される。計測アプリケーションなどで500ksps(秒間キロサンプル数)を24bitの分解能で取るケースなどである。その他では、カメラなど映像を取得するようなケースが考えられる」とロスタン氏は述べている。
現状ではこの「EtherCAT G」は、ETGが抱える技術ではなく、EtherCATのもともとの開発元であるBeckhoff Automation(以下、ベッコフ)が開発した技術ではあるが「2019年9月に公開予定の技術委員会でETGに公開される計画となっている」(ロスタン氏)という。ロスタン氏は「ETGではとにかく技術を早く世に送り出すというところを重視している。団体による合議制ではどうしても時間がかかる面がある。技術開発をとにかく進めることを考えた場合、1社で開発しそれの共有する形の方が早い」と現在の開発状況について語る。今後はこのETGでの公開後にデバイスなどの開発が進み、製品化へと移っていく見込みだ。
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