リンクウィズは2015年3月創業のスタートアップ企業だ。モノづくりを手掛ける中小企業が多数集積する浜松市を拠点に「人の業を受け継ぐロボティクスで働き方を革新する」というビジョンのもとで事業を展開している。同社 代表取締役の吹野豪氏は「リンクウィズとパナソニックの協業により、溶接という加工プロセスだけでなく、溶接前から溶接後に至るまで、フルプロセスで“溶接”に関わる技術を提供できる」と説明する。
リンクウィズが提供している製品は、溶接や塗装などを行うロボット制御ツールのソフトウェア「L-ROBOT」と、生産ラインにおける全量検査などを行う自動検査用ソフトウェア「L-QUALIFY」の2つである。「L-ROBOTが不良品を作らない、L-QUALIFYが不良品を流出させないソリューションだ」(吹野氏)。青田氏が紹介した溶接結果の可否検査の技術のベースになるL-QUALIFYの精度の高さとともに、L-ROBOTを用いたロボットティーチングの容易さも大きな特徴になっている。「溶接作業のパラメータ設定も含めて行う必要のある溶接ロボットのティーチングはカンコツの世界であり、かなり手間の掛かる作業だ。しかし、リンクウィズの技術を使えば、ロボットの立ち上げ期間であれば1カ月半から1週間に、ティーチングだけであれば3日から半日程度に短縮できる」(パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 取締役副社長の濱本康司氏)という。
検査ソリューションに深層学習をはじめとするAI(人工知能)は用いていない。吹野氏は「基本的には、3Dでの形状認識、形状解析、動線解析がベースになっている。AIを使うと判断基準がブラックボックスになることもあり、現時点では正確に3Dデジタルデータを取得し、立体形状を把握する技術として提供している」と述べる。
また同社の顧客は自動車メーカーをはじめ大手企業が60%を占めるものの、残り40%は中小企業である。「中小製造業の熟練技術者のリタイアによる廃業という流れを何とかしたいと考え創業した。そのために開発したのが『町工場で簡単に使えるロボティクス』だ。さらに、基準データに顧客企業の秘匿データになるCADデータを必要とせず、良品の溶接加工結果さえあればよい点も使い勝手の良さになると考えている」(吹野氏)という。
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