トヨタの超小型EVは「オープン価格で販売」、電池活用まで事業を企画電気自動車(2/3 ページ)

» 2019年06月11日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

EVのグローバル展開、モデルベース開発の真価はこれから

 超小型EVよりも大きい車両サイズのセグメントに向けてもEVをそろえなければならない。必要十分なバリエーションを、リーズナブルな価格で提供するため、開発の効率化を図っている。A〜Bセグメントの小型車はスズキやダイハツ工業と企画している。実際の開発はスズキとダイハツの2社で行う。

 スバルとはC〜DセグメントのセダンやSUV、ミニバンなど向けにEV専用プラットフォームを共同開発している。TNGA(Toyota New Global Architecture)の1つと位置付け、「e-TNGA」と呼んでいるという。

 e-TNGAでは、フロント及びリアの駆動用モーターやフード内のレイアウト、前輪に対するドライバーの位置、駆動用バッテリーの幅などを「固定部位」、ホイールベースや電池の搭載量、オーバーハングなどを「変動部位」とする。フロントとリアのオーバーハングやホイールベースの長短、電池容量の大中小、駆動用モーターの出力の大中小などの変動部位と、固定部位の組み合わせて複数のバリエーションに対応する。2020年代にグローバルで10車種を展開する計画だ。

固定部位と変動部位の考え方(左)。モジュールの組み合わせでバリエーションを増やす(右)(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 モーターやパワーコントロールユニット、連結するドライブシャフトなどEV専用部品もスバルと共同企画している。モーターの組み合わせによって、FF(前輪駆動)やFR(後輪駆動)、4WD(四輪駆動)など駆動方式のバリエーションを用意する。

 EVの企画、開発は、ゼロエミッションビークルの商品開発や事業企画を専門とするトヨタZEVファクトリーで行っている。マツダとデンソー、トヨタ自動車で立ち上げた新会社EV C.A. SpiritではEV開発を加速するための基盤技術の提供を受ける。EV C.A. Spiritではマツダが取り組んできた一括企画やモデルベース開発が活用されており、モデルを使って“最適解”を見つけるための理論と、検証をスピーディーに回す方法を検討している。

 トヨタ自動車でも、これまでにモデルベース開発やCAEを活用してきた。現在進めているEV開発と従来のクルマづくりでの違いは、複数車種の一括企画や、車両1台全体の分析に取り入れている点だ。「モーターとバッテリーという構造だからこそ、クルマ1台全体を分析しやすくなった側面もある」(トヨタZEVファクトリー 主幹の西宮大樹氏)という。

 「モデルベース開発は車両1台全体を見るということだ。これまでは個々の分野、部品で異なるツールを用いて解析しており、1台のクルマにした時にどう影響し合うかを考えるのはこれまでになかった。ただ、モデルベース開発で効率向上の効果が出始めるのは、今用意しているラインアップが一巡してモデルチェンジする時だ。開発の蓄積をいかに再利用し、効率的に次のEVを開発できるか。今はトライアンドエラーがあるし、モデルベース開発も完璧ではないので、時間はかかっている。ある部品を変えると他にどのような影響が出て、どのようなフィードバックがあるか、そのデータがたくさんあって初めてモデルでスムーズに答えが出る」(豊島氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.