ひとまず、ハイエンドCAEも設計者CAEもひっくるめて、CAEそのものの役割とメリットを挙げてみます。
例えば、「風速200m/s」や「100万℃」といった、日常では遭遇しないような特殊で極端な環境を設定してシミュレーションが行えます。
これは熱の伝わりや気体の流れによる挙動の変化など、目視や実測が難しい現象でもシミュレーションによって確認できるということです。CAEでは条件を何通りでも設定できるので、その時々の現象を可視化できます。
CAEの活用によって、試作とそれを使った実験を行う回数を減らすことができます。もちろん最終的には実物での実験を行いますが、そこに至るまでのプロセスが短縮できるので開発コストの削減につながります。ついでに試作や実験によって生じる産業廃棄物も減らせることから環境に優しいともいえます。
ここまでの内容で、何となく「CAEはとても便利なんだな(便利そうだな)」と感じていただけたでしょうか? それでは、本題の設計者CAEについて少し掘り下げてみましょう。
そもそも設計者CAEとは、いつ、どのように活用すればよいのでしょうか。
ハイエンドCAEは、その都度、設計用の3Dモデルから解析用のモデルを作る必要があります。これが時間と手間のかかる作業で、高い専門知識も必要なことから、解析専門家や社内の解析担当者に依頼するのが常です。その際、解析依頼の打ち合わせももちろん必要ですし、解析結果を受け取るまで“待ち”が生じます。そのため、高精度な結果を求めるのであればともかく、「今、この瞬間の懸念点をスッキリさせたい」という場合は、設計者CAEの出番といえます。
前述の通り、設計者CAE(向けのツール)は3D CADにアドインされていることが多いので、設計の途中でも思い立ったらすぐに、設計者自らの手でモデルを解析にかけることができます。アドインであれば、3D CADとCAEの環境はシームレスに連携していますので、モデル修正、材料変更、条件変更……と、何度も解析を繰り返しながら、“最適解”が得られるまで形状を検証したり、検討したりすることが可能です。
このように設計者自らが手軽に利用できる代わりに、得られる解析結果の精度はある程度犠牲になります。ですが、それでも設計者CAEにより“おおよその見当”が得られ、一定の評価を済ませた状態で設計を次のステップに進められるので、開発プロセスの短縮といった効果も期待できます。
以上、ここまでは“設計現場におけるメリット”だけをお伝えしてきましたが、実は設計者CAEというものは、“会社の信用度にも関わってくる”ツールなのです。
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