ディスプレイで表示させるユーザーインタフェースなども刷新した。もともとは達成率などの数値を表示するものとしていたが、タコメーター風の表示に変更した。「走りを楽しむスポーツカーのイメージで、歩行を能動的に楽しめるようにした」と中尾氏は述べている。また、ロボットがディスプレイに表示するコメントも吹き出し風として、インストラクターが話しかけてくれるようなイメージを再現している。
歩行トレーニングロボットのデザインにおいて全体的に意識した点は“威圧感のない佇まい”になる。
松本氏は「あまり機能を見せつけないということだ。機能を全面に押し出されると、施設で利用するときに圧力を感じ、近づき難くなる。自然にその場の環境に馴染むように、機能性などが全面に出ないようにした」と考えを述べている。
山田氏は「本当はさまざまな機能を作り込んだので、1つ1つ見て欲しいという思いがあるのは事実だ。しかし、機能が多くありすぎても利用者は理解しきれない上に威圧感を感じてしまう。デザインの視点をもらったことで、従来の『機能を増やす』という発想から、『機能を削ぎ落とす』という逆方向のマインドセットの転換が起きた。シンプル化が進んだ」と述べている。実際にこれらを進めたことで実証の現場でも従来よりもはるかに幅広いユーザーに使ってもらえるようになったとし「市場展開に向けた手応えも感じ始めている」と山田氏は語っている。
実際にこれらの取り組みが実を結び、パナソニックの歩行トレーニングロボットは2018年度のグッドデザイン賞を受賞している。
現状の製品について「製品開発から5年を経て、ようやくまとまり始めたと感じている。現状では想定の点数を上回るペースで開発できていると考えている。後はさらなる低コスト化をどう実現するのかという点や、耐久性に関する点をさらに高めていくことができればと考えている」と山田氏は述べる。
こうした部門間を超えた取り組みで実際に成果が出るという事例は、実はパナソニックでも珍しい話だという。「今回は『What』が明確なプロジェクトにおいて、デザインも異なるカンパニーのメンバーが協力を進めた取り組みとして非常にうまくいったと考えている。パナソニックが訴える『クロスバリュー』をまさに体現できたプロジェクトだと感じている」と山田氏は語る。
既に実証先の施設などからは数多くの引き合いが生まれているといい「2019年度はいよいよサービスの本格開始を実現したい」と山田氏は抱負を述べている。
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