製造IoTでエキスパートの知見を世界拠点に拡張、ホンダ寄居工場の役割DMS2019(2/2 ページ)

» 2019年02月27日 11時00分 公開
[長町基MONOist]
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製造IoTを活用し世界での生産を安定化

photo 本田技研工業 専務取締役 生産本部長の山根庸史氏

 寄居工場では現在、世界の生産安定化、品質高位安定化を行うための高度情報化による生産革新、トレーサビリティーなどとともに、グローバルでの生産体質向上に向けて「生産総エネルギー最小化」に取り組んでいる。「特に日本の70万台という生産量を活用して仕組みをつくり、それを世界に発信する」(山根氏)考えだ。

 クルマの製造においては、新しいモデルの導入時が製造技術の変換点となっている。その際に世界の生産拠点をいかにスムーズにつなぎ、世界各地の生産拠点での製造を円滑に立ち上げ安定化生産に導けるかがカギを握るという。従来はモノづくりのエキスパートが世界各地の拠点を飛び回って、それぞれの製造拠点で安定化生産を行う作業を行ってきた。これらの生産立ち上げにかかる一連の負荷削減を加速するために、製造IoTを活用(モノづくりを見える化し、軽量化する)し、世界各地の拠点での生産をより負荷を小さく行えるようにすることを目指している。

 例えば、クルマの塗装作業ではごみの付着などの塗装不具合に対し、エキスパートの知見とデータ分析を連携して予知予防を行えるシステムを構築した。「エキスパートの知見でさまざまな仮説を立案し、それを約200の項目をあげてデータを分析する。さらに、深堀り用センサーを設置して、日々の変化を計測したデータをすり合わせてみるとあるパターンで不具合が発生することが分かってきた」と山根氏は述べる。

 また、新機種のハイブリッドモーターの立ち上げ時には、当時は、品質影響による不稼働率が70%に達した。精度不良による設備トラブルや接合品質トラブル、チョコ停の増加と直行率の低下などがトラブル事例だが、これらのトラブル発生時のデータを取りながら、品質との因果関係をエキスパートの知見をもとに分析する「寄与度分析エンジン」を構築した。これにより「複数工程にまたがる因果関係を分析し、品質不良につながる源流を特定できるようになった」(山根氏)とする。

 また、クルマのボディーの生産立ち上げの例では、ボディーの仕事量を見ると溶接点が約2700ポイントでラインは50mにも及ぶ。溶接工場には400台のロボットが稼働しているが、製造プロセスは約90工程と膨大であり、変化点を総合的に見ることができなかった。

 以前のように人間がさまざまな部品のデータを取っているのでは、「シビック」の場合で1カ月という長い時間がかかったが、これをインラインでデータ化することを目指して取り組んだという。その結果、計測機器の進化もあり「変化点が分かるようになってきた」(山根氏)。さらに、エキスパートの知見で品質解析ツールをうまく活用したシステムを構築。それにより、治具や部品、溶接位置が適切に対応できているかを把握し「不具合が発生した際もその要因を短期間で見つけられるようになった」と山根氏は語っている。

 これらのように「エキスパートの知見とデジタル技術の高次元での融合で人では困難な『究極の生産体質と商品進化の両立』を加速することを目指している」と山根氏は寄居工場での取り組みについて語っている。

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